音楽はホリデーシーズンの気分を盛り上げてくれる要素のひとつ。
DJユニット〈サントラ・ブラザーズ〉としても活動するライターの渡辺克己さんに選曲してもらったのは、
親愛なる気持ちが伝わる音楽。
1980年、当時16歳だったロディ・フレイム(ボーカル&ギター)を中心に結成されたグループが、1983年に発表したファーストアルバム。温かいアコースティックギターと美しいメロディを中心にした楽曲から、いわゆるネオアコの象徴として、現在でも人気が高い。卓越した楽曲や演奏と同時に、評価されているのは作詞における、フレイムの言葉の選び。パンクの象徴だったジョー・ストラマーのポスターが剥がれ落ちるという一行で、暑かった夏、自身の青春の終わりを表現。次の季節へ向かう意思を歌った「Walk Out To Winter」など。早熟すぎる歌詞で、スコットランドの吟遊詩人とも呼ばれた。
トレイシー・ソーンとベン・ワットによる、当時はカップル(現在は結婚)だったデュオによる、1986年に発表された3枚目の作品。アルバムタイトルから寒い冬にはピッタリ。また、この時期バンドはキラキラしたギターサウンドから、古き良きアメリカのリズム&ブルースのリズムを取り入れ、楽曲に更なる温かみを加えている。ひとりで過ごす寂しさを歌った「Come On Home」は、ゆったりしたソウルバラード。そして「Don’t Leanve Me Behind」も孤独と向き合う心境を、60’sのモータウン風のアレンジで軽快に聴かせてくれる。
大胆にも18世紀のフランス国王の名前を冠とし、自称“フランス生まれのイギリス人”として活動したシンガーソングライター。<Él >レーベルのオーナー、マイク・オールウェイと共に発表した作品は、1960年代のウェストコーストサウンドへの愛と憧憬に溢れ、どれもハートウォーミングな作品ばかり。なかでも人気が高い3枚目の作品は、多重コーラスが美しいビーチボーイズのカバー「Guess I’m Dumb」で幕を開け、ドノヴァン風のチェンバロが楽しい「Chocolate Soldiers」、サーフギターの「Smash Hit Wonder」など。全編楽しい作品になっている。
夜明け前、空が紫に染まる時間。ライラック・タイムのステファン・ダフィーの楽曲は、いつも心和む時間を活写する。デュラン・デュランのメンバーとしてデビューしたのに、ミュージックビジネスに碧碧して、早々に脱退。現在に至るまでマイペースに活動。ほぼ一人で作ったライラック・タイムのラストアルバムは、ほぼ全曲がアコースティック編成の温もり溢れる作品だ。ロンドンの素朴な日常を歌った「In Iverna Garden」、のんびりした田園生活を描いた「The Whisper Of Your Mind」など。1日が始まる静かな時間に聴きたい作品。