相手を思いやり、お互いを知るためには、言葉が大切だ。
そんなことに気づかせてくれる映画作品を、監督/俳優へのインタビュー、パンフレット制作などにも携わるライターの小川知子さんが選んでくれた。
『パリ13区』
監督:ジャック・オディアール
脚本:ジャック・オディアール、セリーヌ・シアマ
Blu-ray 5280円(税込) 発売元:松竹株式会社(提供:松竹、ロングライド)
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©PAGE 114 - France 2 Cinéma
ネットで誰とでも簡単につながれてしまう現代でも、愛は育むのは簡単じゃない。パリ13区でコールセンターで働く台湾系のエミリー、高校教師のカミーユ、33歳で大学に復学したノラ、元ポルノ女優でオンラインでセックスワーカーをするアンバー・スウィート。ミレニアム世代の3人の女性と1人の男性が偶然に出会い、本当の愛を求めてそれぞれの対話が始まる。巨匠ジャック・オディアールが、『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマと『ファイブ・デビルズ』のレア・ミシウスを共同脚本に迎え、エイドリアン・トミネの短編をユーモラスにモノクロの映像に浮かび上がらせる。
『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』
監督:アリス・ウー
Netflix配信
学校に馴染めず、レポートの代筆バイトをしながら大人しく過ごす成績優秀なエリー。ある日、アメフト部の二軍選手ポールから、意中の才色兼備アスターへのラブレターの代筆を依頼される。ポールはエリーと、そしてアスターとも親しくなっていくが、アスターに密かに想いを寄せるエリーは苦悩する。監督アリス・ウーは、プラトン、オスカー・ワイルドらの言葉や、映画のセリフを随所に散りばめ、またエリーに引用させる。彼らは他者の言葉や存在から、それぞれの愛について問い、悩む。そうやって、きっと誰もがとっ散らかった自身を知り、自分らしい言葉を生み出していく。
『カモン カモン』
監督・脚本:マイク・ミルズ
Blu-ray 6,600円(税込)DVD 4.290円(税込)
発売元・株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
NYでラジオジャーナリストをする独身のジョニーは、LAに住む妹が家を留守にする数日間、9歳の甥・ジェシーの面倒をみることになり、一筋縄ではいかない子育ての厳しさや、母親という役割が背負うプレッシャーを知る。善良で、賢く、変わり者であることを恐れないジェシーの澄み切った言葉に触れるうち、母の死後、家族という存在を遠のけていた自身に気づくジョニー。二人はぶつかり、仲直りをしながらも絆を強める。親と子という関係に特定することなく、大人と子どもをつなぐ監督マイク・ミルズのまなざしに、共に育て、育てられることができる未来の社会のあり方を見る。
『偶然と想像』
監督・脚本:濱口竜介
Blu-ray 5170円(税込) 発売元・販売元 : NEOPA
© 2021 NEOPA / Fictive
『ドライブ・マイ・カー』の監督、濱口竜介が、「偶然」と「想像」をテーマに綴る3つの短編集。親友、別れた恋人、大学教授と生徒、セックス・フレンド、久しぶりに会った旧友。関係性を既存の型に無理やりはめようとしても、そこにいる人と人の間に流れる空気、緊張感、関係性に名前をつけることはできないし、瞬間、瞬間で変化するものだ。会話を真剣に掘り下げることで、互いにズレが生じていく人たちが鏡になって、日常のリアリティが言語化されたセリフが刺さりまくり、気づくとスクリーンの中にいる登場人物と、偶然に何かわかちあえたような想像を存分に楽しめる作品だ。