フレンチ・シック
2025.07.11
マルセル ラサンスから始まった
“フレンチ・シック”が
SHIPSのもうひとつの顔に
remember
me?
column.
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1980〜90年代、SHIPSが提案するスタイルに新鮮な彩りを与えたのは、フランスからの薫りでした。ファッション的には“フレンチ・シック”とも呼ばれる着こなしやアイテムが、SHIPSが標榜するスタンダードに洗練された印象をもたらしたのです。それを象徴するブランドが、現在、SHIPSがエクスクルーシブで展開しているマルセル ラサンスです。マルセル ラサンスは1970年にフランスでデビューしたブランドで、アメリカントラッドの世界観をフランス流に仕上げたそのコレクションは、日本でも早くから、多くの雑誌などで取り上げられ話題のブランドでした。
「SHIPSがデザイナーブランドと契約したのは、マルセル ラサンスが初めてです。1991年に代官山に日本で初めての店を開きますが、実はその前、1980年代から渋谷のMIURA & SONSでは彼のTシャツなどのカジュアルな製品を扱っていました。ボーダーのTシャツにしてもベーシックな白とネイビーではなく、ブルーにパープルのラインが入って、従来のカジュアルにはない新しさが感じられました」
そう話すのは、SHIPSでマルセル ラサンスの立ち上げにかかわり、2012年からは渋谷でrdv o globeという店を営む前淵俊介さんです。
「彼から教わったのは“バランス”です。コーディネートでも、色の分量でも、バランスが大事だと教わりました。彼もアメリカのテイストが好きですが、フランスのフィルターを通してデザインを考えていました。そうすると色出しも新しくなりますし、カタチも洗練されたものになるのです」と前淵さんはマルセル ラサンスの魅力を語ります。
SHIPSの50周年記念ではマルセル ラサンスとアメリカの老舗靴メーカー、オールデンがコラボしたモデルが復刻されています。アッパーの素材に希少なコードバンを使っているところは通常のモデルと変わりませんが、つま先の形状にスクエアトゥを採用した特別なモデルで、フランスとアメリカの感性をバランスよく融合し、唯一無二のデザインに仕上げる彼の真骨頂とも言えるモデルです。
「フランス人はアメリカのベタなもの、例えば軍物でもお洒落に見せる着こなしが得意です。そのセンスをマルセル ラサンスは“エスプリ”とよく表現していました」と当時を振り返るのは、SHIPS代表取締役社長の原裕章です。対して前淵さんは「フランスには老舗メゾンの伝統もありますし、どのブランドにもそうした下地が根付いているのです。洒脱な“エスプリ”は、一朝一夕に得られるものではありませんが、それもフランスのブランドの魅力でしょう」と話します。
フレンチシックな着こなしで登場するアイテムは、ボーダーTシャツのようにいかにもフランスらしいものもありますが、ステンカラーコート、ストライプシャツ、ローファーなど、どれもスタンダードで特別なものはありません。それでもサイズや色の分量のバランスを考えることでファッショナブルに、センスよく見せることができることを、マルセル ラサンスが教えてくれたのです。
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1991年に東京・代官山にオープンしたマルセル ラサンスのショップです(現在は閉店)。「このブランドと契約したくて、日本のいろいろな会社から声がかかっていたらしいのですが、最終的にSHIPSが選ばれました。その理由はSHIPSが提案したパリの店をそのまま日本に持ってくることに彼がとても興味を持ってくれたからです」とrdv o globeのオーナー、前淵俊介さんは話します。「場所はこちらで選んで、内装は先方からの要望をそのままにしました。ココナッツマットを敷いた床で、什器もパリの店とそっくりに。最初は100%輸入品で構成しました。彼の店に並んでいたオールデンやクラークスの靴、フランスのロッドソンの靴も入れました」と前淵さん。マルセル ラサンスのパンツを製作していたベルナール ザンスのように「彼から教えてもらい、その後SHIPSが直接仕入れるようになったフランスブランドも多い」と前淵さんは話します。
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1970年にデザイナーとしてデビューしたマルセル ラサンス。すぐにパリ市内にはシャンゼリゼやサンジェルマンなどに自身の名を冠した店を構えますが、この店で早くから扱っていたのが、意外にもアメリカの名靴として名高いオールデンです。しかもラウンドトゥがほとんどのオールデンのラインナップにあって、マルセル ラサンスがコラボレーションしたのが、希少なスクエアトゥの「ケンドールラスト」を用いたモデルです。アッパーに使われているのはオールデンの象徴とも言える希少なコードバンの革ですが、通常のモデルとは異なる佇まいを備え、フレンチ流のテーラードスタイルにこのデザインの靴がとても似合っていました。SHIPSの設立50周年を記念して復刻されたのが、このモデルです。デザインはプレーントゥとチャッカブーツの2型。インソールには3社のロゴが刻印された、アニバーサリーにふさわしい一足です。
ALDEN × MARCEL LASSANCE
plain toe ¥220,000
chukka boots ¥236,500
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モッズコートとは1950〜60年代にかけてアメリカ陸軍に採用された野戦用のコートのことですが、1960年代のロンドンで、「モッズ(Mods)」と呼ばれる若者たちがスリムなスーツの上から着用し、大流行しました。それで「モッズコート」、あるいは「モッズパーカ」と呼ばれるようになったのです。1990年代に、マルセル ラサンスはこのコートを洗練されたイメージにデザイン、一世を風靡するほど人気になりました。このコートもSHIPSの50周年のタイミングで復刻されています。象徴と言えるフィッシュテール、左右のフラップポケット、比翼仕立てのフロント、ゆとりのあるサイジングは当時のまま、表地はオルメテックス社のナイロンが採用されています。しかも1990年代当時、このコートの製作にかかわっていたとも言われる伝説的な英国のブランド、サイエンス ロンドンの織りネームとボタンを採用、ファン垂涎の逸品です。
SCiENCE LONDON × MARCEL LASSANCE
¥121,000
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フランス版の『THE OFFICIAL PREPPY HANDBOOK』とも言われる『BCBG』(ティエリ・マントゥ著 Hermé )です。タイトルになった「BCBG」は、フランス語の「bon chic bon genre(ボン シック ボン ジャンル)」の略語で、上品で育ちの良いことを意味します。この言葉はフランス社会でエリートと呼ばれる上流階級の人たちの生き方そのものとも言われており、本書では彼らのファッションを含めたライフスタイルや生き方などがユーモアと皮肉を込めて解説されています。第2章の「ムッシュBCBG」では、ラコステのポロシャツ、ジェイエムウエストンやパラブーツの靴、カルティエの時計など、いまも多くの人に愛用されるフランスの名品が登場、フレンチ・シックの着こなしの参考にもなる本です。フランス版は1985年に発行、1990年に『フランス上流階級 BCBG(ベーセー・ベージェー)』(光文社)というタイトルで日本語版が出版されています。