長年定番として展開していたオリジナルスーツが、シップス設立50年の節目にリニューアル。
長く愛用できるベーシックなスタイルとクオリティを継承しつつ、移り変わる時代に応じてさらなる進化を遂げました。
その全貌を、開発秘話とともにご紹介いたします。
今、必要なスーツとは?を
改めて自問し、形にしました
シップスの定番オリジナルスーツはかねてから、万人をスタイリッシュに見せる上質なベーシックを主眼としてきました。それはスーツにおける普遍的な価値といえますが、いっぽうで時代のニーズは常に変化するもの。たとえばスーツが毎日の必需品ではなくなりつつあるからこそ、消耗品ではなく長年着用できる一着が欲しい。あるいは、シーズンを問わずいつでも袖を通せるスーツが欲しい。そんな声を近年しばしば耳にします。
今季リニューアルした定番オリジナルスーツは、今、スーツに必要なエッセンスを改めて問い、その理想を形にしたもの。本格スーツは初めてというビギナーの方から、長年スーツを愛用するベテランまで、誰もが納得できる出来ばえになりました。そのポイントを以下に解説しましょう。
日本最高峰のファブリックメーカー
「御幸毛織」と生地から共同開発
新しくなった定番スーツ、その一番のポイントは生地にあります。一見、なんの変哲もないベーシックな無地ですが、実は糸1本からこだわって独自に開発したもの。タッグを組んだのは、日本最高峰のファブリックメーカーと名高い「御幸毛織」です。渾身のオリジナルファブリックが完成するまでには、語りきれないほど長いメイキングストーリーが。シップス 商品企画担当の矢吹宗士と、御幸毛織の森田祐介さんによるやりとりのダイジェストは次のようなものでした。
矢吹宗士
シップス
商品企画担当
森田祐介さん
御幸毛織
Profile
シップス 商品企画担当/矢吹宗士
銀座のテーラーを経てシップスに参加。パターンメイキングや縫製の専門的知見を活かし、オリジナルのテーラードアイテムの企画を担当している。バイヤーの今村・小川とともに、シップスのドレスクロージングの中核をなす人物。
御幸毛織/森田祐介さん
ジャパンファブリックの雄・御幸毛織でテキスタイルの企画・卸売を担当する生地のスペシャリスト。得意の語学を活かし、イタリアで行われる生地の展示会「Milano Unica」への出展にも携わっている。

こちらこそ、四日市までご足労いただきありがとうございました。発注をいただく前から現場を見ていただけるなんて……シップスさんの情熱に感動しました。

いえいえ……それで、やはり今回のスーツは、ゼロから生地をつくりたいと思います。お力添えいただけますでしょうか?

もちろんです! 仕上がりはどんなイメージですか?

ざっくりいうと、“イタリアとイギリスのいいとこ取り”という感じでしょうか。英国生地のように仕立て映えし、長く着てもヘタらない耐久性がある。それでいてイタリア生地のような際立つリッチ感もあるという……

なるほど。そこを突き詰めるならば、糸からつくり込まないとですね。スーパー130’sの繊細な羊毛をあえて太めの糸に紡ぎ、タテヨコ双糸で織り上げるというのはどうでしょう? タテ糸をS方向に、ヨコ糸をZ方向に撚糸すれば、光沢が際立つと思います。

それはいいですね! タテヨコ双糸で英国的なハリを出しつつ、原毛の細さと撚糸の工夫で出せれば理想的です。ところで……ションヘル織機を使ってぎっしりと糸を打ち込めば、より仕立て映えする生地になりますよね?

そ、それは確かに……でもションヘルで生産が追いつくかな……
旧式織機だけに、なにしろ織るのに時間がかかるもので……
いや、でもやりましょう! せっかくですからこだわりきらないと。

ありがとうございます! 無茶をお願いして申し訳ありません。

いえいえ、これはかつてないクオリティになりますよ。
それから、仕上げには「ビエラシュランク」という手法を採用しましょう。
イタリアで行われているフィニッシュで、艶がいっそう引き立つはずです。

いいですね。思い描いていた以上の生地になりそうです!
開発秘話の詳細はYoutubeをチェック!
流行不問で着られる、
モダンベーシックな仕立ても追求

柔らかな肩周りと、
首に吸いつく上襟
肩パッドや芯地は薄く柔らかいものを用い、軽やかな着用感に仕立てています。見た目も端正さと軽快感をバランスよく両立しました。また、首筋にぴったりと吸いつくような上襟も特徴。着心地と美観の両面に貢献する作りです。

現代のスタンダードに
設定したラペル&ゴージ
スーツの顔となるのが襟周り。ラペルは細すぎず太すぎずの中庸な幅に、上襟とラペルの継ぎ目であるゴージラインも、高すぎず低すぎずの位置に設定しました。どちらも現代の王道を狙い、幅広いシーンやスタイルにマッチするよう計算しています。

適度に絞った
ウエストライン
フロントも現在のスタンダードである3つボタン段返り。ウエストは自然にシェイプアップし、美しい着姿を演出。とはいえタイトに攻めすぎず、スーツに不可欠なゆとりも確保しています。
ベーシックな無地4色を
厳選して展開
ファーストシーズンである2025年AWは、「スーパーブラック」「ネイビー」「ブルー」「グレー」の4色を展開。すべて無地ながら、微妙な発色の違いにこだわりました。ちなみにスーパーブラックのみ、艶を控えめにする仕上げを採用。冠婚葬祭すべてに対応するブラックスーツとしてつくり込んでいます。
※各色ベストのご用意もございます。
ジャストなスーツに出会う
6つのポイント

スーツの見映えは袖先で変わる
本格スーツは、店頭に並んでいるとき袖ボタンがついていないのが普通。購入時には袖丈調整&ボタン付けが必要です。その理由は、袖丈がほんの少し違うだけでスーツ全体の見え方が大きく変わるから。慣れた人なら自分でも判別できますが、経験あるスタッフに任せて仕上げれば失敗がありません。

着丈はヒップが半分程度
隠れる長さが適正
ジャケットの着丈は長すぎても短すぎてもNG。ひと昔前はかなり短めが主流でしたが、今はヒップが半分くらい隠れる長さがスタンダードといえます。パンツ丈や袖丈と違い、購入してから大きなお直しはできないので、事前にチェックが必要。

パンツは丈のバランスが
こだわりどころ
スーツの場合、パンツが短すぎるのは好ましくありません。裾が足の甲に少しだけかかる「ハーフクッション」、または裾がぎりぎり甲にかからない「ノークッション」が今の主流で、前者はクラシック、後者はすっきりとした印象に仕上がります。

こんなポケットに
なっていませんか?
たとえウエストが入っても、このようにポケットが開いてしまう場合は腰周りがタイトすぎる証拠。とはいえ、サイズを上げるとウエストが緩い……という場合は、お直しでジャストフィットに調節するのがおすすめです。購入時に承れるため、スタッフにご相談ください。

パンツによって、お直しの
許容幅が異なります
ウエストやヒップを広げるお直しをする場合、パンツに縫い代がどれくらいあるかによって対応可能な幅が変わってきます。ポイントは、ヒップ中央部分。シップスのオリジナルスーツは縫い代を多めに残しているため、幅広いお直しに対応できます。

スペアパンツを一緒に
揃えておくという手も
ジャケットに比べて消耗が早いパンツ。そこでシップスでは、同じ生地のスペアパンツをオーダーでお求めいただくことができます。定番スーツだからこそ、少しでも長くご愛用いただきたいという思いを込めたサービスです。




















先日はファクトリーを見学させていただきありがとうございました! さすが御幸毛織さん、素晴らしい生地づくりをされていますね。