TAKE IVY
2025.09.12
本場のアイビーリーガーを写した
名著『TAKE IVY』の復刊を
SHIPSが全面サポート
remember
me?
column.
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ファッション好きならば『TAKE IVY』という本の名前を一度は聞いたことがあるでしょう。1965年に婦人画報社(現在のハースト婦人画報社)から発行された写真集で、アイビーリーグと呼ばれるプリンストン、ダートマスなどのアメリカの名門大学の学生たちやキャンパスを取材・撮影した希少な本です。アイビー&トラッド好きにはバイブルとして語り継がれ、60年代の日本のアイビースタイルの隆盛にも大きく寄与しました。出版後絶版になっていた時期も長く、2000年代初頭のアメリカではeBayなどのオークションサイトで高額で取引されていました。それは1960年代のアイビーリーガーたちの写真をまとめた本がアメリカには皆無で、ファッション関係者を中心に多くの人たちがこの本を探していたからです。実はこの本の復刊にSHIPSは深くかかわりました。
それは2006年のことです。きっかけとなったのは下町のホテルのバーでの集まりでした。このときのメンバーは、SHIPS代表取締役社長(当時は副社長)の原裕章と当時アパレル会社に勤務していた土屋正彦さん、当時『メンズクラブ』の編集長だった小暮昌弘さんの3人です。ファッション談義をひとしきりした後に、原と土屋さんは小暮さんに「アメリカでこれだけ『TAKE IVY』が注目されているのに、日本でこの本が入手できない。その理由は何?」と話を切り出しました。小暮さんは「絶版になって久しいし、会社としてはすぐにこの本を出版する気はなさそう」と説明したそうです。しかし原と土屋さんの2人は「これは歴史的に意味がある本、絶対に世の中に残しておくべきだ」と熱く語り、原は「SHIPSがスポンサーするかたちでなんとか復刻できないものか」と小暮さんに申し出ました。
呑んだ席からスタートした『TAKE IVY』の復刊のプロジェクトでしたが、実現は簡単なものではありませんでした。使用した写真等は会社に一枚もなく、印刷所に元版も残っていませんでした。編集部に残っていた古い『TAKE IVY』を一冊分解し、コンピューターを使ってデジタル技術で製作し直すという方法を取りました。紙も初版に近いものを探し出し、何度も校正を重ね、写真も当時の古びた色合いに仕上げました。
「テレビもない! 車もない! 携帯なんてとんでもない! そんな時代のアメリカの若者は、なんて輝いて見えたことだろう。僕らはみんな、それに憧れました」
2006年に完成した『TAKE IVY』の本の帯には当時SHIPSの社長だった三浦義哲の言葉が書かれています。
このとき復刊した『TAKE IVY』は、ハースト婦人画報社では自社のウェブサイトのみで、SHIPSでは主だった店舗で販売しました。まだSNSなども盛んではなく、プロモーションもほとんどしなかったのですが、復刊の噂がファッション好きに口コミで広がり、ほとんどが売れてしまいました。その後『TAKE IVY』は、英語版や日本語版も再び復刻され、書店などにも並ぶようになりました。しかし2006年の3人の集まりがなかったら、いまでも『TAKE IVY』は、まだまだ“幻の書”だったかもしれません。
remember me?
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column
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プリンストン大学近くの喫煙具店の前でのスナップ。ボタンダウンシャツにマドラスチェックのショーツ、素足でローファーを履く学生です。2006年に『メンズクラブ』は再び同校を訪問しています。その号には喫煙具店が化粧品店に変わったと書かれていますが、街並みは当時のまま。さすがアイビーリーグがある歴史的な街です。同校はアイビーリーグ8大学のひとつで、ほかにハーバード、イエール、ペンシルバニア、コロンビア、ブラウン、ダートマス、コーネル大学があります。ちなみに『TAKE IVY』というタイトル名は、ジャズの名曲『TAKE FIVE』をもじって、くろすとしゆきさんが命名したものです。(写真:林田昭慶 協力:ハースト婦人画報社 以下同)
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右ページに写っているのは、ニューハンプシャー州にあるダートマス大学のスクールカラーである「ダートマスグリーン」のパーカを着用するボート部員で、左ページはダートマス大学のエイトの面々です。実は『TAKE IVY』は、VAN がプロモーション用のムービーを撮るためにアメリカへ取材旅行を敢行、VAN創業者、石津謙介氏からの依頼でカメラマンの林田昭慶氏がその旅に同行、撮影した写真を一冊にまとめたものです。つまり動画もあります。動画ではボート部の選手たちがボートを漕ぐ様子が生き生きと描かれています。まるでミュージックビデオのような出来栄えで、60年代のアイビーリーグにタイムスリップできます。
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左ページに映るのは、ダートマス大学の学生です。バッターボックスの学生のTシャツの背中にはギリシア語の「KΣ(カッパ・シグマ)」の文字。これは学生たちが住んでいる寮の名前だと思われます。男子寮が「フラタニティ」、女子寮が「ソロリティ」と呼ばれていました。こうした有名大学の寮生活を皮肉たっぷりに描いた映画が『アニマル・ハウス』(78年)です。監督は『ブルース・ブラザーズ』(80年)を撮ったジョン・ランディス。主演がジョン・べルーシ。映画の舞台は60年代と『TAKE IVY』が作られた時期とも重なり、アイビースタイルもたくさん登場します。興味のある方はぜひご覧ください。
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ダートマス大学の学食でのスナップです。中央の学生は、セーターかスウェットシャツかは写真からはわかりませんが、グリーンのトップスを着用していて、胸に「1968」の文字が入っています。これは着用している学生の卒業年を表す数字です。グラフィカルで、洒落ています。その彼がはいているのがホワイトジーンズです。当時のアイビーリーグにはドレスコードがあり、大学にブルージーンズをはいていくことは禁止されていました。それでピケ素材などのホワイトジーンズや、右ページの右側の学生のように、オフホワイトなどのコットンパンツをはくことが、東部の学生たちを中心に流行りました。