Spectators Evergreen Library vol.12 緑色世代の読書案内 Spectators Evergreen Library vol.12 緑色世代の読書案内

Spectators Evergreen Library vol.12 緑色世代の読書案内

SHIPS MAG読者の皆さん、こんにちは。
カルチャーマガジン『スペクテイター』編集部の青野です。
8月末に発売した最新号「ポートランドの小商い」特集は、もうご覧いただけましたか?
個人の技を活かしたものづくりをおこなっている小規模ビジネスの創業者にインタビュー取材をするために、ポートランドへ出かけてきました。ポートランドの名前を雑誌で見たことがある人も多いでしょう。アメリカ太平洋岸のオレゴン州にある、かつては鉄鋼の街として栄えた人口60万人の港町。この小さな街から生まれる手づくりの製品や食文化が世界の注目を集めています。

わざわざ古い機械でおこなう手刷りの印刷、鍛冶屋の技術を復活させて作られた昔ながらのストレート剃刀、古きよきアメリカの味を追求したホームメイド・パイ…職人の手作り技術によって生み出されたコダワリのハンドメイド製品の数々は、どのようにして生まれたのか? 世界が憧れるライフスタイルを生み出してきた人たちは、どんな仕事で糧を得て、またその仕事を通じて何を実現しようとしているのか?

そんなことが知りたくなって、およそ6年ぶりにポートランドへ降り立ったわけですが、取材を進めるうちに「アメリカも変わったなぁ」と思わされる場面に何度も遭遇しました。

アメリカといえば、何でも大量に生産して大量に消費する国というイメージがあるけれど、今回インタビュー取材をさせてもらった彼らーーーレコードショップ運営、石鹸づくり、活版印刷など、個人的な興味や趣味を発展させるかたちで新しい商売をスタートさせた主に三十代前後ーーーは、そうしたイメージと逆行するように、細部に時間とコダワリを費やして、質の高い製品を生み出すことに人生を駆けている。そのうえ、商売で儲けて会社を大きくすることよりも、いまの規模でも良いから地域に貢献し、質の良い商品を作ることのほうが大事だと誰もが口を揃えて言うのです。

アメリカの若い商売人たちは、なぜ、このような考えを抱くようになったのか?

この謎に迫るべく、ポートランドの小商いを取材してきました。彼ら一人一人の口から語られた「まっとうな商売」に対するコダワリのなかに、みなさん自身の結論や今後の商売のヒントを見いだしながら読んでもらえたら嬉しいです。

ポートランドで味わってみたい小商い系フード5

ひとくちサイズのドーナツに好みの味をトッピング。旅好きの夫婦がはじめたドーナツは甘すぎない独自の味が人気で朝から行列ができるほど。4個入り=2.45ドル

4759 NE Fremont St.

pipsoriginal.com

おばぁちゃんのレシピを受け継いだ、古き良き時代の味が人気のホームメイドパイ。季節のフルーツを使った甘過ぎない味は病みつきになる美味さ。1カット=4.5ドル

3420 SE Division St.

laurettajeans.com

Coavaは豆の品質にコダワったコーヒーを提供するロースター。フルーティな香りとすっきりとした後味のサードウェーブコーヒーは地元で人気沸騰中。1杯(手淹れ)=3ドル

1300 SE Grand Ava.

Coavacoffee.com

ポートランド市内だけで、なんと600を超えるフードカート(屋台レストラン)があるという。写真は中南米系のカートが集まるエリアで販売されていた本場の味のタコス

7238 SE Foster Road.

portlandmercado.com

市内に醸造所を構え、オリジナルテイストのビールをつくっているブリューワリー。地元の雑誌のビールコンテストで一位の座を獲得したラガーは絶品!

240 N Broadway suite two.

uprightbrewing.com

(Photograph by Jeffrey Freeman)

photo

スペクテイター34号
特集『ポートランドの小商い』

2015年8月31日発売
定価952円(税別)・B5版・172ページ
発行=有限会社エディトリアル・デパートメント
http://www.spectatorweb.com/

■HISTORY OF THE TOWN
■アナログムーヴメントの静かな震源地
〈ミシシッピ・レコード〉創業者 エリック・イサークソン
■ノウ・ユア・シティ的ポートランド案内
〈ノウ・ユア・シティ〉代表/社会起業家 マーク・モスケイト
■ビールづくりはフリーセッション
〈アップライト・ブリューイング〉創業者 アレックス・ガヌム
■活版印刷のあたらしさとこだわり
〈スタンプタウン・プリンターズ〉創業者 エリック・バグドナス
■時を超えた手づくりパイ復活
〈ロレッタジーン・パイ・ベイカリー〉ケイト・マクミラン
■20周年をむかえるインディペンデント出版社
〈マイクロコズム・パブリシング〉創業者 ジョー・ビール
■手づくりドーナツとスモールビジネス精神
〈ピップス・オリジナルドーナツ〉創業者 ジェイミー・スネル
■植物エキスを活かして石けんを作る
〈MAAK LAB〉創業者アノリア・ギルバート & テイラー・アールマーク
■オネスティなコーヒーを追求するロースター
〈コーヴァ・コーヒー・ロースター〉創業者 マット・ヒギンズ
■メイカースペースは21世紀町工場
〈ADX〉創業者 ケリー・ロイ
■ストレートレザーに見る温古知新
〈ポートランド・レーザー・カンパニー〉創業者 スコット・ミヤコ
■講演録「ポートランドの市民活動が盛んな理由」
ポートランド州立大学特命教授:スティーブ・ジョンソン