130人のポートレート集を手掛けた 河合正人氏に直撃!  『JAPANESE DANDY』が物語るメッセージ 130人のポートレート集を手掛けた 河合正人氏に直撃!  『JAPANESE DANDY』が物語るメッセージ

130人のポートレート集を手掛けた 河合正人氏に直撃! 『JAPANESE DANDY』が物語るメッセージ

130人のポートレート集を手掛けた河合正人氏に直撃!『JAPANESE DANDY』が物語るメッセージ

130人のポートレート集を手掛けた河合正人氏に直撃!
『JAPANESE DANDY』が物語るメッセージ

SHIPS MEN

フラワーコーディネーターとしての活動の傍ら画期的な写真集やファッションにまつわる書籍等を企画・ディレクションしてきた河合正人氏。そんな氏が満を持して発売した写真集『JAPANESE DANDY(ジャパニーズ・ダンディ)』は、これまでの日本のポートレート集にはなかった130人という圧倒的なボリュームの撮り下ろしだ。しかも普段ほとんどメディアに出ることのない著名な方々が数多く登場している。そのキャスティングの妙、被写体の魅力的で完成されたコーディネートの数々、美しくクラシックなスーツなど見所は満載だ。河合氏本人にこの写真集に込められた意図と製作の裏側についてお話を伺った。

???『JAPANESE DANDY』を出版する経緯やこの写真集のコンセプトについて教えてください。

私の本業は花のコーディネーターなんですが、昔から洋服が好きだったんですね。多感な時期にメンズクラブを見ながら服が好きになっていった世代、いわゆるアイビー世代、VAN世代です。そんな自分がこの10数年、多くの魅力的な方と知り合いになっていくなかで、そういった方々を写真に撮りたいなと単純に思うようになったんです。いわゆるポートレートの写真集は日本にはないんですよ。男に関しては特に。タレントさんか社長紳士録か、昔の昭和の文豪とかそういうものしかない。ならば、自分で魅力的な方々を被写体にしたポートレート集を出そうと考えたのが一つ目の大きな理由です。

???確かに言われてみれば純度の高いファッションポートレート集というものは皆無に等しいですね。

そうです。加えて二つ目の理由は、テーラードスタイルっていうものがカジュアル化の隆盛に伴ってどんどん斜陽化しているなかで、スーツやコートを着こなした130人の写真が、30年とか50年とか経ったときに資料としての価値を生むんじゃないかなと思ったんです。誰もが知っているTAKE IVYじゃないですけど、あれと同じように2013年〜2014年に現実に日本にいた方々という資料ですよね。その日本人達のテーラードスタイルの写真を残す事は有意義な事でも有ると思いました。そして三つ目の理由は、自分がかつてのメンズクラブを見て洋服好きになったように、これを見てくださった方々が被写体のスーツ姿やジャケット姿を格好よいと思ってもらえれば、もう少し洋服に興味を持ってもらえるんじゃないかと思ったんです。斜陽化しているテーラードスタイルが少しは活性化するかもしれないと。

????これだけインパクトの強い写真集であれば、多方面でかなり大きなレスポンスがありそうですね。

もちろんそれはそれでありがたいのですが、僕は写真集としてだけではなく、これの写真展も行いたいのですよ。少し大きな額装で130人をずらっと並べるとか。そしてそういったことを全国の都市でやることによって、その地域の洋服屋さんにも何か動きが出たらいいなと思っています。

????説得力と迫力のある写真が並ぶわけですから、本当に見応えがありそうですね。それ以外には何か企画や展開を考えられていますか?

日本国内だけではなく、海外の方にも見て頂きたいと思っています。明治時代にスーツが日本に入ってきて長い時間を経て、今日本ではこういう人たちがいて、こんな魅力的な着こなしをしている人がいるのだということを見て欲しいんです。例えば車しかりカメラしかり洋酒しかり。かつて海外から入ってきたものでも、今や日本のブランドが世界の冠たる存在になっていますよね? レクサス、ニコン、キャノン、サントリーなどなど。同じように海外から入ってきたスーツを日本人なりに咀嚼したスタイルを世界に打ち出してもいいんじゃないかと思ったんです。それはまたクールジャパン的なコンテンツになるとも考えています。それぐらいの想いを持って作った本なんですよ。

????なるほど。この130人という人数は期間でいうとどれぐらいで撮り終えたんでしょうか?

撮影をお願いする場合は必ずその方にお会いして、コンセプトを伝えます。それと私の想いですね。そこでサンプル写真をお見せして、直接口説いていったんですよ(笑)。サンプル写真として2名の方をお撮りしたのが2年前(2012年)の6月だったと思います。その後本格的に撮り出したのが去年の春ぐらいですかね。なので、約2年半ほどかかっています。

※実際のデザインと異なる場合がございます。

???河合さんはお花の写真集『FLOWERS』なども手掛けてらっしゃいますが、人物は今回が初めてですよね。やはり花と人物は違いますか?

いや、僕のなかではお花も人物のポートレートも一緒なんですよ。単純に花か人物かの違いという感覚です。もちろん進めて行く過程などは違いますけど。 今回の企画は確かに人物ですが服装に切り口がありますから、自分が服が好きでスーツに関してもある程度知識があるというのは大きかったと思います。

???モデルの方々の洋服に関しては、着てきたものをそのまま撮ったんでしょうか?

こちらのお願いとしては「あなたの一番好きな、自分らしい洋服を着てきてください」ということだけです。ただし、一応どんな服装なのかを事前に聞くんですよ。というのは、130人もいるためにテイストやスタイルが似てくる人もいるわけですね。この本は小難しいコンセプトは別にして、単純にスタイリングブックとしても見られるものにしたかったんです。イタリアありの、フレンチありの、アメリカントラッドあり、イギリスありの。単純にどこのスーツ、どこの靴、どこの帽子っていうふうに見てもらっても楽しめるものを目指したんです。なので同じ服やスタイルが出てこないようにするために、モデルの洋服は先にどんなものかを確認しました。

???服装の基本はクラシックなスーツがベースですよね?

そうですね。スーツやジャケット、コート姿でお願いしますと伝えました。とはいってもクラシック寄りのモードな装いやウィメンズのコートをあえて着ている人などもいます。

???いわゆる世に出ているストリートスナップ集とは一線を画すものだと思うのですが、それを意識されたりはしたのでしょうか?

ストリートスナップ集を全く意識をしていませんし、そういう写真を否定する気もありません。あれはあれで面白いと思いますし。ただ飽和状態な感じはしていますね。自分は、もうちょっと被写体の男の人の内面が出るような写真を撮りたかった、それだけです。

???130人の順番なども含めたエディットはどうされたんですか? 

ポートレートのエディットに関しては、もちろん自分にしかできませんから、いろんなものを加味して進めました。ポートレートの撮り方のバリエーションは、立ちかスツールかイスに座る若しくは台を使うという限られたパターンです。しかも背景はすべて一緒ですから順番を決める際は、洋服のテイスト、例えばイタリア系のあとにアメリカンを入れて同様のスタイルが並ばない配慮をするとか、色、被写体のポーズなどすべてを考えた上でバランスを取って決めていきました。それはそれで非常に楽しい作業でしたよ。

???おそらく、これだけボリュームのあるポートレート集は大きな話題になると思うのですが、第二弾はありうるのでしょうか?

もし、これだけの人選に匹敵する方々がまた数多く見つかれば考えると思います。二番煎じで完成度が落ちるというのはやりたくないので。同等かそれ以上のものができるのであればトライしてみたいという思いはあります。とはいえ、まずは今回出た『JAPANESE DANDY』を小難しいことは抜きにして単純に楽しんでいただきたいです。ここに収められたスタイルのある大人たちの写真を見て、スーツの装いってやっぱり格好いいなって思っていただけたら本望ですし、自分のスーツを一着あつらえるきっかけみたいなものになれればと思っています。もちろん中年以上の方々にも、久々におしゃれでもしようかなと思える存在になれれば嬉しいですね。

河合氏とともに『FLOWERS』を世に出した写真家、大川直人氏が撮影を担当。130人の被写体は、経営者、会社員、公務員、小説家、放送作家、スタイリストなど実に様々だ。年齢も10代?90代という驚くべき幅の広さ。基本お一人、見開きで2カットで構成されている。保存性の非常に高い、日本初の男のファッションポートレート集と呼ぶに相応しい。大きな判型とずっしりと重厚感のあるパッケージもまた大きな魅力だ。

『JAPANESE DANDY』

B4変型判:ハードカバー
オールカラー全272ページ
?10','000(+TAX)
発売元:万来舎
発売日:2015年1月中旬予定
http://japanesedandy.com/

河合正人(かわいまさと)

1958年京都生まれ。大学卒業後、老舗生花店にて修行後独立。1986年に河合正人花事務所を設立。フラワーコーディネートでは農林大臣賞をはじめ多数の受賞歴がある。1994年、2012年に花をモチーフにした写真集『FLOWERS』を刊行。ファッションにも造詣が深く、ファッション誌での連載やファッション系の書籍の企画・構成なども手掛ける。