4月2日、世界がブルーに染まった! オーティズムデー 4月2日、世界がブルーに染まった! オーティズムデー

4月2日、世界がブルーに染まった! オーティズムデー

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――そもそも東さんが理事長をされている「Get in touch」とは、どのような団体なのですか?

東 「Get in touch」は、2012年の10月に生まれたばかりの新しい団体です。とはいえ、私たちメンバー7人はそれぞれ長年マイノリティをサポートする活動を続けてきている人たちばかりなんですよ。

――何故、いまそのような団体を設立しようと思ったのでしょうか

 東日本大震災を機に、組織的に活動しないと“間に合わない”と感じたのが一番ですね。団体へのお誘いはこれまでにもあったのですが、自由度が少なくなることもあって断っていたんです。今回ばかりは必要に迫られて、自ら率先して立ち上げました。

――活動というのは、どのような目的で具体的にどのようなことをしているのですか

 目的は、マイノリティに対しての正しい知識を知ってもらうことではなく、どんな状況、状態でも排除しない、混ぜこぜの社会を作ることが目的です。東日本大震災では、障害のある方や家族が避難所に入ることを躊躇してしまったり、いろいろと問題が起きたんです。そういったことの解決策として、まずはみんなが集う場所を作りたいと思いました。そのために、私たちの活動は講演会やシンポジウムという手法ではなく、アートやイベントなどファッション性の高いものをオシャレな場所でやっていこうとしているんです。

――ライブなどが楽しめる「Warm Blue 2013」を東京タワーで開催したのはそういう意味もあるんですね。日本ではまだ馴染みがないですが、ブルーのライトアップは世界規模でおこなわれているみたいですね。

 4月2日というのは国連で定められた「世界自閉症啓発デー」、この日は、各地のランドマークをブルーにライトアップする取り組みが世界45ヶ国以上でされています。海外ではLight It Up Blueと呼ばれていますが、「Get in touch」ではより親しみやすいように「温かい青」という意味でWarm Blue(ウォームブルー)と名付けました。

――この取り組みに「Get in touch」が参加するきっかけは何かあったのですか?

東 昨年、N.Y.でおこなわれた世界自閉症啓発会議に日本代表として参加させて頂いたんですね。そこで、各国のライトアップがいかにニュースとして伝えられたかをそれぞれが発表する場面があったんです。その会議場で日本ではほとんどニュースにならなかったことを報告すると、とても驚かれたんです。翌日には日本の啓蒙活動をどうするかが議題になってしまって…。「日本の有名人や政治家のご子息に自閉症の子どもはいないのか?」「カムアウトはどうなっているんだ」などなど各国の方に聞かれて、「日本でカムアウトすることは厳しい」と答えるととても驚かれました。外国では有名人や政治家など影響力のある人たちの多くがカムアウトしていて、支援までしているんです。その場で「日本は20年遅れている」と言われてショックを受けたのがきっかけですね。

――マイノリティのサポートのなかでも、オーティズム(自閉症)に注目した理由は何かあるのですか。

東 いじめ、虐待、ワーキングプア、ホームレス、ストーカー、性同一性障害、セクシャルマイノリティといったものは、すべてではないですが、発達障害(自閉症)が背景であることも多いんです。なので、オーティズム(自閉症)の支援に取り組むとかなりいろんなことがラクになると思われます。通常の学級の1クラスに2〜3人はその可能性がある子が在籍していると言われています。すごく仕事ができるのにコミュニケーションができなくて会社を転々としている、とても勉強ができるのに就職が難しい、いい子なんだけどイジメにあっている、またはイジメているなどなど。その背景に発達障害がある場合も考えられることがわかれば、随分変わってくるはずです。

――海外はオーティズム(自閉症)に関する取り組みが進んでいると仰いましたが、それは具体的にどういうことが挙げられますか?

東 多くの企業が取り組みに参加していることが一番大きいですね。有名無名に関わらず、企業が社会貢献をすべきだということが浸透しているんです。一方で、サポートしてくれた企業にはイベント側も大きく名前を出して、win winの関係を作っている。私たちも、必ずwin winの関係になるようにしていきたいんです。

――人の意識を変える活動というのは、具体的に何かをすることよりも難しそうですね。

東 難しいと考えると難しくなる。その人次第です(笑)。シンポジウムや講演を続けるほうが難しいことも多いんです。そこに来られる方々はすでに意識が高い人ですから。よくわからないけどアートイベントだから、音楽イベントだから、ファッションイベントだから来たっていうほうが入口は広がるでしょ。なにか貰えると聞いたから来たとか、きっかけは何でもいいと思う。

――そのうえで、大事にしていることはどんなことになるのでしょうか

東 福祉の匂いはさせたくないと考えています。こういう活動は、すごく真面目で崇高なことをやっていると勘違いされることもあります。「大変ですね〜」と言われたり。実際は楽しみながらやっていますよ。このイラストを描いてくれた小石川ユキさんは飲みの席でお会いして、私がファンだったこともあって半ば強引にお願いして興味を持って頂いたんです。ブルーのクルマを集めてくれた方も、西麻布のバーで偶然出会って。カースタントの方で、実は私と共演したことがあったと判明したんですよ。よく考えると、私はよく遊んでいます。でも、職場よりプライベートな時間のほうがチャンスはあるんです。

――より理解を深めるために、今後どのような活動を考えていますか?

東 色とりどりの方に参加してもらって、楽しんでもらうことが重要だと思っています。骨髄バンクなどさまざまな活動を20年以上やってきた経験上、一番手堅いのは草の根的な広がりだと確信しているんです。そのなかで、真剣だけどおもしろいファシリテーター役になれればと思っています。おしゃれな場所にこだわるのも、遠慮してなかなか街に出てこれないオーティズム(自閉症)の人たちに、六本木や原宿とかにどんどん来て欲しい。昨年の開催でも、「六本木ヒルズに来られるとは思ってもいなかった!」と瞳を輝かせたり。「こんなに人が集まっているところに行っても、うちの子は大丈夫なんだ!」とか、当事者家族の方たちにすごく喜ばれて、私たちもとても嬉しかった。

――彼らはすごく気を使って生きているんですね。

東 私も含め、本当はみんなマイノリティなんです。順風満帆の人なんていなくて、個人個人は自分の運命と戦っている。「生きづらさを感じている」という点では、私たちみんながつながっていけるんです。生きづらさを感じていない人なんて世の中にいないですから。でも、マジョリティにいる安心感が欲しくて、マイノリティになることの不安や恐れがあるんです。つまり、マイノリティの人が生きやすい世の中を作れば、すべての人が生きやすくなる。それを自由に気楽にできたらいいですね。

――最終的に「Get in touch」はどうなることが理想ですか?

東 最終的には「Get in touch」がなくなることが理想ですね。早くやめたいです(笑)。でも、まず目下の目標は自閉症などのご家族さんがカムアウトする選択肢ができることですね。全員がすべきというわけではなくて、あくまでも選択肢があることが大事なんです。隠すことに後ろめたい気持ちを持っている人も多くいるので。でも、その人たちが「うちの子オーティズムなのよ、かわいいのよ」と言える日はそう遠くはないと信じています。

東ちづる

1960年、広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。女優としてはもちろん、コメンテーター、講演会、執筆業など幅広く活躍している。これまでに、骨髄バンク、ドイツ国際平和村、アールブリュットなど、さまざまなボランティア活動を続けてきている。著書に「らいふ」(講談社)など多数。