Go with the Flow Vol.3 対談:ザ・ラウンドテーブル代表 藤原辰也さん Go with the Flow Vol.3 対談:ザ・ラウンドテーブル代表 藤原辰也さん

Go with the Flow Vol.3 対談:ザ・ラウンドテーブル代表 藤原辰也さん

Go with the Flow Vol.3 対談:ザ・ラウンドテーブル代表 藤原辰也さん

SHIPS JET BLUE

やって参りました人気連載企画、リヒトの『Go with the flow』。前回(Vol.2)の先輩モデル、ユウスケさんとの対談がよほど楽しかったのか(!?)、いつの間にかこの企画は“あの人に会いたい”的な様相に。前回同様、今回も対談形式となりました! お相手は、10年来の親友、藤原辰也さん。友人の距離感について、もの作りについて、今後について、今回もざっくばらんに語ってもらいました!


――お二人の出会いのきっかけはなんだったんですか?

リヒト 確か初めて会ったのはモントーク(原宿のカフェ)ですよね。

藤原 そうです。当時僕はそこのキッチンで働いていて、リヒトさんはランチタイムによく来てくれていたんですよね。

――藤原さんはモントークで働かれていたんですか?

藤原 そうなんです。モントークを運営していたヘッズという会社で5年ほど働かせてもらった後、トランジット ジェネラル オフィスという空間をプロデュースする会社に勤めて、2009年にザ・ラウンドテーブルという会社を立ち上げました。ファッションやインテリア、グラフィックデザイン、フードクリエイションなど、様々な切り口のコンテンツを発信・提供しています。青山のカフェ、NUMBER Aはそのプロジェクトの一部なんですよ。

――キッチンにいたのに、会う機会があったんですね。

藤原 結構サボり魔だったので、自分(笑)。それにリヒトさんはもうモントークのスタッフみんなと仲が良くて、一緒にご飯にいくようにもなってたんです。

リヒト いや僕ね、色男が好きなんですよ。男前がね(笑)。

藤原 当然僕はリヒトさんのことは知っていましたから。雑誌でよく見ていたし、CICATAのことももちろん知っていた。ある意味憧れの存在でした。仲良くさせてもらう用になってからは展示会に行ったり、一緒に飲みにいったり。

リヒト 女の子紹介してもらったりね。

藤原 まあそういうこともなくはなかったけど(笑)。でも仕事でからむようなことはほとんどなかったですよね。

リヒト でもCICATAのムービーを作ってもらったことはあるよね。なにか困ったことがあるとタッチャンに相談していた時期があったんですよ。イベントのこととか、展示会の見せ方とか、ケータリングとか、そういうのはよく分からなかったから。タッチャンに聞けばなんかお洒落なことが出てくるんじゃないかなって思って(笑)。

藤原 京都の藤井大丸でも一緒に仕事しましたね。僕が京都の藤井大丸の7階をディレクションしていた時があって、そこにCICATAも扱わせてもらっていたんです。で、その1周年のイベントでリヒトくんとスタイリストの祐真さんにトークショーをやってもらって。会社つくって最初の大きな仕事だったので、いろいろ大変だった。

リヒト でもおもしろかったよね。夜が特に(笑)。

――ところでリヒトさんってどういう人でした?

藤原 僕からすると学生時代から雑誌に出ていた憧れの存在だから、知り合った頃は緊張しながら会っていたんです。でも当時からこんな感じでいつも陽気で、おもしろい人だなっていうのが第一印象でした。でもね、それでいて結構繊細なんですよ。たまに一人でお店でぼーっと考え事していたりして。ものをゼロから生み出す人だから、きっといろいろ大変なんだろうなとか思って見てました。ほら、明るい人ほど隠していることも多いって言うのあるじゃないですか。みんなといる時はわざとバカやったり。でも性格的には生真面目。

リヒト でもそういうところって似ているんと思うんですよ。僕とタッチャンって。女の子のお尻ばかり追いかけているように見えるかもしれないけれど、本当はそれどころじゃないんですよ……。

藤原 こうやっていつもふざけるんですよね(笑)。

――二人でいる時はどんな会話になるんですか? もの作りについてとか?

藤原 もの作りの話にはならないですね。言うのも言われるのも嫌でしょ、その部分って。だからそこは暗黙のうちに線を引いています。まあこれは誰に対してもそうなんですけどね。

――藤原さんは飲食中心だけどクリエイティブもやっている。リヒトさんはファッションデザインに携わっている。そういった“ものを作る”という行為に対してなにか使命感のような、あるいは責任のようなものって感じますか? それともただ自分が楽しむためにやっているんでしょうか?

リヒト 前から思ってたんだけど、タッチャンは好きなものを作る作業とビジネスが上手くつながっているんですよ。お客さんを喜ばせること、クライアントを喜ばせることが、自然と自分のやりたいこととリンクしている。僕なんかは自分だけわくわくして終わっちゃうことが多くて。

藤原 でもやっぱりまず自分がそれを楽しめるかどうかが大切なんだと思います。お店やるのもブランド作るのも自己表現の一部。やっぱり本人が楽しくないと、本当におもしろいものって生まれないと思うんですよね。もちろんそれだけじゃダメで、プロとしてやっていく以上、お客様もハッピーでないといけない。そこは、いつの時代もものを作る人間につきまとう葛藤じゃないですか。

リヒト 僕はクライアントのことをちゃんと考えるようになったのって結構最近。売れることとか、まわりが喜ぶこととかはCICATAをはじめた頃はあんまり考えてなかったかもな。もちろんわがままにやっていたわけじゃなくて、まず自分が盛り上がってしまうというか。その後にまわりの人たちのサポートがあって、『こういうものもあった方がいいんじゃない』みたいなアドバイスをもらって、じゃあそれも作ろうってどんどんものが増えていく。でもそうすると、全部出来上がった時になんだか分からないものになってしまうんですよね。何でもかんでも作るから、結果、何がやりたかったのか分からないものになってしまう。ようは欲張っちゃうとダメになるんです。

藤原 でもその気持ち、分かります。

リヒト 例えばこのカフェでハンバーガーを出すとする。このハンバーガーも最高だけどあのハンバーガーも最高っていうのってあるじゃないですか。でもそれを全部やっちゃうとダメなんだよね。

藤原 そうそう。どうしてもやってくうちに欲張っちゃうんですよね。でもそれをすべて出しちゃうと、お客さんが混乱するんです。ここは何が得意な店なんだろうって。だからいくら良いものができても、どっちかはあえて切らないといけない。

リヒト それが僕はできなかった。誰かがアボガドバーガーが欲しいっていえば作るし、別の肉バージョンのアボガドバーガーが欲しいっていわれたらそれも作っちゃう。でも今考えればそれって作っているものにイマイチ自信がもててなかったからなのかもしれない。だからついつい数を打っちゃうっていう。

――でもクリエイションって本当に不確かなものじゃないですか。スポーツのようにタイムやスコアで明確に優劣が判断されることはない。だから自分の中に正解を見いださなければいけない。だけど、自己満では終わってはいけない。とても難しいことですよね。それとやっぱり、ある程度は稼ぎたいですもんね?

藤原 最重性はひとそれそれですが、やっぱりお金は必要ですよね。最近よく考えるのは、それをどこでやるかということです。

リヒト 分かる。

藤原 ただ稼ぐだけなら結構方法はあるんです。でもそれは結構辛いことだったりする。やりたいことをやるために今の道を選んだわけですから。どういうバランスでライフスタイルを充実させるか、って言うのは常に考えることです。

リヒト お金を稼ぐ仕事が嫌なわけじゃ決してないんだよね。でもそれだけだとバランスが取れない。

藤原 趣味のために仕事をする人と、趣味を仕事にしている人と、大きく分けて2つあると思うんですけど、僕はその後者。ほんとは趣味を突き詰めて仕事にする、そういうポジションまで行けると嬉しいなって思っています。でもそのためにはいろんなものを作っていって、そして認めてもらわないとダメなわけです。今はそのゴールを目指して実績を重ねていこうと思っているところです。

リヒト 日本はまだ環境が整っていない部分があるというのもありますよね。アイディアありきの事業を始めたい人やアーティストが、自分の作品だけで食べていけるような環境やチャンスがまだまだ少ないように思う。

藤原 表現者に対して国から支援が出るところもありますしね。ヨーロッパなんかは特に。

――でもこの間何かで読んだんですけど、そういう支援がちゃんとしている国は芽が出やすい反面、政治的な拘束も生じるそうなんです。お金を出す分、口も出すというか。でも日本は逆に支援が薄いから、妙なしがらみもなく、インディペンデントなショップやブランドがたくさん出てくる。つまりある意味で自由なんですね。だから面白いっていう風に見る人もいるそうですよ。

リヒト それは確かに一理あるかも。

藤原 もの作りをする人の永遠のテーマですね。

――昔と今、景気のことや環境のことなど、いろんなことが変化しています。それはクリエイションにも影響を及ぼしていますか?

藤原 景気や経済に左右されている感じはないですね。そもそもそんなに大きな仕事をしていないし、結果の悪さをそのせいにしたくない。でも震災は僕にとって大きな分岐点だったかな。よりシンプルに楽しく生きられる方が良いなってあれ以降思っています。なんとなくね。欲が減ったっていえばそうなのかも。

――手の届く範囲の幸せ的な。

藤原 上には行きたいけど今はまだそのタイミングじゃない。今は自分のやりたいことをやっているのが良いのかなって思います。そのためにたくさんの人と会って、いろんな刺激とパワーをもらっているところです。

――リヒトさんは?

年二回、シーズン毎に展示会をしていたCICATAをやめたことで、すごく自分を客観視することができるようになりましたね。締め切りやいろんなことに追われてやっている時って、本当に視界が狭くなるんです。その時は気づかないんだけど、まわりが全然見えていないんですよね。昔はショップに洋服を買いにいくなんてことはほとんどなかったけど、今は結構行くんです。それがちょっと楽しかったりする。今後はまたちょっと違うことをやろうかなってぼんやり考えてますよ。実はすでに、タッチャンに相談したいこともあるし。

藤原 そうなんだ。僕も自分なりのゴールはある程度見えていて、それが近くなった頃にリヒトくんと一緒にやりたいなって企んでいることがあるんです。あと3年くらい、40くらいまでに実現させたいかな。

リヒト そんなこといわれたらまた欲張っちゃいそうだね(笑)。楽しみにして待っていよう。

――お二人ともまだまだやりたいことは尽きないですね。期待しています。今日はありがとうございました!

RIHITO/リヒト

1976年、東京生まれ。95年よりファッションモデルをスタート。パリ・ミラノなど海外に活動の場を広げ、ジル・サンダーのメインモデルなどを務める。 2000年に自身のブランド「CICATA」をスタートし、2011年に惜しまれながらも休止。現在はSHIPS JET BLUEのエクスクルーシブコレクション、CICATA SHIPS JET BLUEを手がけている。

藤原 辰也

1976年、兵庫生まれ。様々なライフスタイルをボーダーレスにクリエイトする仕掛人集団、THE ROUND TABLE INC. 代表取締役社長。その守備範囲は広く、ファッションやインテリア、グラフィックデザイン、フードクリエイションなど、様々な切り口のコンテンツを発信・提供している。青山にあるカフェ、NUMBER Aも人気。
http://www.theroundtable.jp/index.html

NUMBER A

東京都港区北青山3?12?2?1F
Tel:03 6427 4038
営業時間 Lunch Menu:11:30 - 17:00 Grand Menu:15:00 - 24:00(L.O. Food 23:00','Drink 23:30)