日本を代表する眼鏡の産地、福井県sabae(鯖江)の歴史と魅力とは? 日本を代表する眼鏡の産地、福井県sabae(鯖江)の歴史と魅力とは?

日本を代表する眼鏡の産地、福井県sabae(鯖江)の歴史と魅力とは?

日本を代表する眼鏡の産地、福井県sabae(鯖江)の歴史と魅力とは?

SHIPS MEN

SHIPS EYEWEARは、鯖江市が主催するデザインコンペから生まれた企画であることを御存知でしょうか。眼鏡やモノ情報が好きな人たちに知られている、日本が誇る高級眼鏡フレーム産地。今回は、そんな鯖江の歴史や、これからの展望について鯖江市産業環境部商工政策課の渡辺賢さんにお話しを伺いました。


――いまでこそ鯖江市といえば眼鏡の生産地として知られていますが、産業として生まれたのはいつ頃からだったのですか?

渡辺 鯖江での眼鏡づくりは1905年(明治38年)に始まっています。当時、鯖江には絹織物と漆器の産業はありましたが、大半は農業を中心に営んでいたようです。冬は出稼ぎが必要だった村人たちの生活を安定させようと、増永五左衛門という庄屋さんが私財を投じて大阪や東京から眼鏡職人を呼び寄せ、村人たちに眼鏡づくりを伝えたことが始まりとされています。その後、紆余曲折を経て、戦後の高度成長に沿って今のような産地が形成される中、産地は80年代にチタン製眼鏡フレームの量産化を世界に先駆けて成功しました。金属アレルギーを起こしにくく、軽量で錆びないチタン金属を使った眼鏡は、今や世界標準になっています。この成功で鯖江は高級品の産地として世界的な地位を確立しました。

――チタンフレームの開発に成功してからは、順風満帆という感じで今日まで続いているのですか?

渡辺 いえ、昨今は日本の他の産業同様に厳しい状況に置かれています。バブル崩壊で国内需要が落ちたことや、長引く円高で輸出も厳しくなっています。また、中国でもチタンフレームの生産が始まり、今ではボリュームゾーンの多くは中国製です。鯖江産地は今日まで「作ること」のみに注力してきたことで技術面では世界トップになりましたが、その一方、自らが売ることについては消極的だったことから、マーケティング力や企画力、販売面が弱いといった課題を抱えています。

――とはいえ、最近は鯖江生産を謳う国内ブランドも増えていますよね。

渡辺 そうですね。最近は、30代、40代の若い経営者さんがデザイン性にも優れた新たなブランドを立ち上げて頑張っています。

――SHIPS×sabaeのコラボ眼鏡は、鯖江市主催のMEN'S CLUBとのコラボによるデザインコンペから生まれたものですが、そこには、産地のマーケティングやマーチャンダイジング強化という狙いもあったのですか?

渡辺 そうですね。これまでにも、産地の業界団体が中心となって様々な取り組みをしてきましたが、なかなか根本的な解決には至っていません。そこで、平成20年度に「地方の元気再生事業」という国の支援制度への応募をきっかけに、私たち行政も一緒になって産地鯖江の活性化を目的とした事業に取り組んできました。初年度は東京ガールズコレクションさんの協力を得て、若い女性の人気ブランドさんとサングラスの協業開発に取り組みました。これがきっかけとなり、その後もデザインコンペ形式による製品開発やファッションモデルの梨花さんとの協業にも繋がっています。

――SHIPSのオリジナルフレームは、そういう取り組みが実を結んだ商品でもあるんですね。

渡辺 はい。ここ数年は、産地企業に感性や対応力を高めていただくための取り組みに力を入れています。例えば、流行の形は雑誌などで把握できますが、サイズ感やディテール、色などを決めるには優れた感性が必要です。また、試作であれば1〜2日で仕上げるアパレルのスピード感も勉強になります。眼鏡は精密加工を求められる工業製品ゆえに、試作で約1ヶ月、量産では3〜5ヶ月かかるのが当たり前の世界。そういった部分も含めて産地のメーカーさんにはよい刺激になっています。

――最近は、モノ誌やメンズファッション誌で取り上げられるようになって、鯖江に訪れるお客さんが増えたのではないですか?

渡辺 10年位前から、眼鏡が好きな方や、モノにこだわりを持つ方を中心にお越しいただけるようになりました。しかし当時は、産地といえども眼鏡を買える場所が少なく、製造現場も見られないなどの課題がありました。そんな中、地元業界が中心となり2010年3月に産地のシンボルタワーともいえる「めがね会館」内に「めがねミュージアム」をオープンさせています。この施設は産地メーカー約40社の製品を一同に展示販売するショップに加えて、大正時代の製造道具や歴史的な眼鏡を展示するミュージアムと体験工房を併設しています。工房では予約制にはなりますが、糸鋸とヤスリを使って世界でたった一つのプラスチックフレーム作りが体験できます。

――自分だけの眼鏡フレームが作れるのはいいですね。今後、鯖江の眼鏡産業をどうしていきたいなどありますか?

渡辺 これまでの取り組みを通じて、産地“sabae”としてのブランド確立を目指す若手経営者10名による任意組織が誕生しました。これら若手経営者達は、現在、ブランドの専門家の指導の下、sabaeブランドとしての共通理念を自らの手で生み出そうと頑張っています。また、SHIPSさんのフレームにも刻印されていますが、これらの意を汲む製品には「sabae」の刻印を入れるなど、まだまだ実験的ではありますが産地のブランド力向上に努めています。将来的には、時計でいうスイスのようなブランドを確立して、バーゼルフェアのような国際展示会を鯖江で開催できるようになればいいなと思っています。