Safe & Clean Vol.8 「オーストラリア流ライフセービング」 Safe & Clean Vol.8 「オーストラリア流ライフセービング」

Safe & Clean Vol.8 「オーストラリア流ライフセービング」

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ライフセービング発祥の地オーストラリア。特定非営利活動法人下田ライフセービング・クラブ(以下、下田LSC)は、1998年から姉妹提携を結ぶオーストラリアのマルチドー・サーフ・ライフセービング・クラブ(以下マルチドーSLSC)と交流事業を行っています。日本からはオーストラリアのオンシーズンである12月に約2週間トレーニングキャンプのため渡豪します。(オーストラリアからは日本のオンシーズンである8月に約2週間マルチドーSLSCのメンバーが来日)今回は昨年12月に渡豪した、下田LSC競技部学生部長 佐野太郎(ライフセービング歴4年)が、オーストラリアのライフセービングについてレポートします。



日本から約7','000km離れた南半球に位置する国オーストラリアでは、約半年間にわたり海水浴シーズンです。国民の多くが海や川でのレジャー・スポーツを好み、楽しんでいます。オーストラリアの人々は朝中心の生活を送る人が多く、日の出とともに海辺には多くの人が集まり、サーフィン、ライフセービング、スイム、カヌー等をする人たちで賑わっています。年齢はさまざまで小学生から高齢者まで分け隔てなく通学・出勤前にウォータースポーツを楽しんでいます。

そしてその中心にあるのがビーチに設置されているサーフ・クラブと呼ばれるライフセービング・クラブの運営する施設です。サーフ・クラブとは各市町のライフセービング・クラブが運営する活動施設でライフセービング・メンバー向けのトレーニング施設以外にも、州によってはレストランやバーなども経営しています。オーストラリアでは海水浴場を開設している街の住人の殆どがライフセービング・クラブをサポートしています。

なぜオーストラリアではここまでライフセービングが支援されているのか、今回のトレーニング・キャンプでは、そのライフセービング文化に触れることができました。
オーストラリアでは休日をビーチ等で過ごす家族が多く、幼少期から頻繁にビーチで遊ぶため、学校では授業の一環として安全指導が行われていました。そこで水辺の危険を理解し、安全管理を学び自分の身を守るための意識が植え付けられます。
マルチドーSLSCでは5歳児から参加出来るライフセービングのスクールを行っており、安全指導だけではなく、海の状況を自身で判断するための技術や体力向上のためのトレーニング、更にはライフセーバーの育成を行っており、街の多くの人たちが参加しています。
トレーニング・キャンプ中、そのライフセーバー育成の1つの要素であるトレーニングを体験することができましたが、練習時におけるモチベーション維持にも工夫がされていました。
例えば、ライフセーバーの基本的な練習の一つにIn-Out(インアウト:ビーチから波を越え沖に向かい、再び波をキャッチしてビーチもどる)という練習があるのですが、コーチは練習の一本一本に対して必ず良かった点を見つけ出して褒めるということをしていました。そして何か一つ褒めた後に改善点の指摘を行うという流れで練習が進んでいきました。また、褒めてから改善点を指摘することと合わせて、自分自身で何が出来ていて何が出来ていないのか。改善のためにはどのようなことをしなければならないのかを考える手助けをしてくれながらトレーニングのプログラムが進められました。そのため、ただ受動的に教わったことをこなすのではなく、自ら考えながら実践していく。そして、その中で成功した点、失敗した点を考慮して次の練習に挑むという質の高い練習をすることが出来ました。
こうした大切な基礎練習の部分から、しっかりとした考えのもとでライフセーバーの育成を行っているオーストラリアのライフセービングに触れる事が出来ました。

今回のトレーニング・キャンプでは、ライフスタイルの中に文化として根付いているオーストラリア流ライフセービングを感じることができました。
この貴重な体験を活かし、今年の夏もビーチに訪れた皆様に安全なビーチで楽しめるように準備をしていきたいと思います。

佐野 太郎
(特定非営利活動法人 下田ライフセービングクラブ 競技部学生部長)

高校の選択授業でライフセービングの活動を知り、2009年に大学でライフセービング部に入部。現在は下田クラブのメンバーとして白浜地区におけるパトロールに参加。2012年より競技部学生部長を勤めており、競技にも力を入れている。