クリスマスに観たい映画 クリスマスに観たい映画

クリスマスに観たい映画

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「写真家の僕がクリスマスに観たい映画と言うのはズバリ、自分の職業“写真家”と関係があるものだったりする」そう答えてくれたのは写真家の小林幹幸氏。今回のこの企画がまだ打ち合わせ段階でタイトルの「クリスマスに観たい映画」と、耳にした時からこの企画は是非、小林氏にお願いしたいと思っていた。その後、早速原宿のオフィスに打ち合わせに向かうと小林氏は心地よく快諾してくれた。何故今回、小林氏を選出したかは映画を観た人だけが解っていただけると思うのです。



僕が「クリスマスに観たい映画」として選んだ1本は”幸せのポートレート”。タイトルのポートレートに惹かれた。 原題は”FAMILY STONE" いかにも日本的なタイトルだと思うが後半になってこのポートレートの意味が分かる。大ヒットシリーズ“セックス&ザシティー”のサラジェシカパーカーの主演と言う事で注目され2006年7月に公開。やっぱり日本では大コケ。','この種類の映画を夏に公開するのが悪いと思ったものだ。そして“セックスー”でもそうだったようにこの映画でも登場人物の会話は英会話の教材に使えるほど、リアルだったりする。もちろん大人の英会話教材ね。お得意なエッチな会話も当然入っている。クリスマスホリデーに恋人の実家を訪ねる。キャリアガールの主人公は何でも開放的なこの家族に馴染む事が出来ない、というこのストーリー、公開当時は見た人の中でも良かった人と悪かったという人に大きく別れていた映画だ。ゲイの恋人や人種差別、アメリカの現代社会の縮図が入っていているが、これはいまの日本に置き換えてもありそうな話しで僕は充分に楽しめた。実は僕も10数年前に結婚した時、彼女の家族に会いにいった時には、同じような経験をしている。田舎の大家族にはどうやってもフリーランスの写真家はあやしい人にしか見えなかったらしい。当時全身レザーでウエスタンブーツ、ポルシェのオープンカーに乗っていた僕は今から見ても、変人を絵に描いたような人間にしか見えなかった。上に立った言葉使いしか出来ない僕の心を開いてくれたのは家族のみんなだった。今は、車にも乗らないエコ生活を続けているが、それは田舎のナチュラルライフに目覚めさせてくれた彼女の家族のおかげだと思っている。この映画を見るとあのときの自分を思い出すのだ。そう、それは都会に暮らす僕らにはわからない世界が存在すると言う事も示している。同時に大家族の中で“存在”すると言う事は都会のような人を大きく見せるような自己表現ではなく、自己の悪い所までひけらかすほどの表現、ポジショニングが必要である事。

話しは脱線したが、“幸せのポートレート”

映画も写真もやはり僕はファッションから入ってしまう。
サラジェシカが出ていてファッション的にNGな映画には出ないだろうと言う事で見るとやはりビンゴ!登場人物のホリデーファッションが格別なのだ。一見、大手アパレルメーカーのクリスマスキャンペーンのファッション広告になりそうな所、リアルクローズを使う所やその人の商業や性格設定で周到にファッションが決められているキメの細かさを感じる。
ラストシーン近くで主人公のエベレットがバスに乗って帰っていく恋人の妹を追っていくシーン。ホリデー普段着のグレーのヨットパーカーの上にビジネスのウールコートを羽織り駆け出していくシーンには参った。すんごいミスマッチが場面の切迫感、俳優の演技力と相まってそう反するパワーを持ったシーンに仕上がっている。おとうさんが家族で記念写真を撮るシーンが6X6の正方形フォーマットのハッセルブラッドだったり。おとうさんのゆるくでもスクエア(外国では几帳面という意味)な性格を示している。ファッションが登場人物の性格や場面を表している。写真家としてもこういうシーン大好きです。 最後に流れる音楽はJEFFERSON STARSHIPの“COUNT ON ME"1978年のヒット。現役高校生の時に聞いていました。途中バーのシーンに流れて来る曲はELVIN BISHOPの“FOOL AROUND AND FELL IN LOVE"でボーカルはMICKEY THOMESというこれもJEFFERSON STARSHIPのボーカルつながりと言うセンス良さ。もちろん、曲の内容もストーリーにばっちり合ってしまっています。そしてラスト、幸せのポートレートが家族を繋ぐ。判り難いかもしれないし、最後の筋書きには、こんな事ってあり?なんて思うかもしれないけど、家族を持っている人ならきっと共感できるはず。いやいやって実はうちの奥さん、田舎の大家族出身で大学4年間をオレゴンの田舎で過ごしていましたがこんな話しありえないと言っていました。どうも、夢を見るのは男子の方かもしれません。

クリスマスとは関係ありません!でもいいのです。好きなのです。公開は1993年、僕がNYに通い始めた年でもありました。この映画の主人公マシュー(マットディロン)は神経分裂症を患い落ちこぼれたカメラマン。当時“ドラッグストアカウボーイ”などで二枚目俳優の代名詞だったマットディロンがホームレスを演じるという話題作でした。
NYの寒い街角を彷徨い歩く自分と重ね合わせたのかもしれません。自分はそんなに格好良いはずもなくただの思い違いなのですが。ホームレスになった主人公はそこでまた屋根の下に住むため頑張り始めます。各場面でそこで生きる人々を小さいKONIKA 35というコンパクトカメラで切り取っていきます。最後に相棒のジュリー(ダニーグローバー)が“お前は私の息子だ”と言ってサービスサイズに焼かれた写真を一枚一枚見ていきます。ストーリーは言えませんが、写真をやっている人間としては最高のシーンでした。実はここの担当の編集者も生涯ベスト5に入る映画です、とも聞いた。そう、これは、家族や女子と一緒に見ると言うより、男子の仲間たちで見た方がいいかもしれない映画ですね。もう戻らない生きているその時間を大切に生きること。2時間ほどの映画と言う世界はそんな”どう生きるか!?”という意思を育ててくれる教科書のような者だと思います。クリエイティブの世界を目指す人で、まだ見ていない男子がいたら絶対見ておく事を推薦します。クリスマスに男子が集まってこの映画を見るなんて素敵だと思います。最後には無言になってしまうかもしれないけれど、明日、どう生きなくちゃいけないか、自分の存在と言う物を改めて考え直させてくれたりして。僕もこの当時、撮影、編集に明け暮れ、この映画を見て夜明けの渋谷の街角で涙してました。やっぱり女子にはこんな世界わからないだろうなー。


写真家 小林幹幸


小林幹幸
1963年 埼玉県生まれ
東京工芸短大、広告制作会社をへて独立。
1992年 parco promising photographersに選出。
2000年 コマーシャルフォト誌 小林基行特集号
2002年スクールガールプロジェクトを始める。
同プロジェクト作品“innocent youth"にて、NYのエージェンシー ART+COMMERCEより、PEEK2007に選出される。
2008年 本名の小林幹幸にクレジットを変更。
写真作家活動と平行し、ファッション、カタログ、雑誌等で活動している。
朝日広告賞、読売新聞奨励賞、毎日広告デザイン賞など、受賞多数。
写真家8人でINFINITYを主催。定期的に写真展を行っている。

写真集
1995年 ”トーキョーポートフォリオ”新潮社 
1996年 “トーキョーモデルズ” ネオファクトリー 
2004年 “青春トーキョースクールガール” ブックマン社 
2005年 “スクールガール” 新風舎 
2006年 “エバーグリーン” 主婦と生活社 
2007年 “スクールガール6x7” アップフロントブックス 
2007年 “スマイルカメラ” アップフロントブックス

写真展
2002年 “デイズ オブ ヘブン” ブリッツギャラリー
2004年 “One love 名前のない街” アートフォトサイトギャラリー
2006年 “スクールガール” アートフォトサイトギャラリー
2008年 “ナチュラリーズ” ブリッツギャラリー
2011年 “インフィニティ展” “インフィニティ2展” 広尾インスタイルフォトグラフィーセンター

ほか““zen photographers" " digital plants展”“city scapes展”
“sound of photography展”“ポートレート専科”チャリティーも含めなど合同展多数。
神戸ファッション美術館に21点、オリジナルプリントが収蔵される。