毎日を心地よく生きる人のライフスタイルカタログ 〜vol.7 アーティスト AYAKA FUKANO〜 毎日を心地よく生きる人のライフスタイルカタログ 〜vol.7 アーティスト AYAKA FUKANO〜

毎日を心地よく生きる人のライフスタイルカタログ 〜vol.7 アーティスト AYAKA FUKANO〜

「眺めのいい日々と、いごこちのいい服」を提案するSHIPS Daysでは、一日一日を丁寧に生きている人たちのライフスタイルにスポットを当てた連載をお届けしています。第7弾は、MONGOL800のジャケットアートワークなどで活躍中の新進気鋭アーティスト、AYAKA FUKANOさんが登場!

ポップアートを彷彿とさせる色彩豊かな作品が魅力のAYAKAさん。芸能人のファンも多く、有名ミュージシャンやアパレルブランドとのコラボでも注目を集めています。そんな彼女が絵を描き始めたのは意外にも4年前。多感な時期のドイツ居住、22歳での出産、大切な人たちとの出会いなど、さまざまな経験が絡み合って今のアーティスト活動に結びついているといいます。彼女の感性はどのようにして育まれたのか、その半生を紐解きました。

外国人になって気づいたこと

親の仕事の都合で、中学2年から高校2年までドイツに住んでいました。日本人はほとんどいない田舎町で、地元の学校に通うか英語の学校に通うかの二択だったので、英語の学校に入ることに。英会話も友達づくりもほぼゼロからのスタートで、大変でしたが刺激的な毎日でした。

その学校はインターナショナルスクールだったので、64ヶ国ほどの国の生徒がいて、私も完全に外国人。生徒間で貧富の差があったり、目を合わせて話すことが苦手だった私に「相手の目を見ないと伝わらないよ」と教えてくれた先生がいたり、異文化での生活は私にいろんな気づきを与えてくれました。

中でも驚いたのは、みんな自国の歴史や立ち位置をよく知っていたこと。世界情勢にも当たり前のように関心があって、普段の会話でもよくそういった話題が出ていました。あるとき、タイ人の女の子にこう聞かれたんです。「日本は昔、タイにひどいことをしたけどあなたはどう思ってる?」って。でも私は何のことかわからなくて、でもそれがすごく恥ずかしいことだというのは強く感じましたね。自分の生まれた国を知り、世界を知り、世界に生きる人たちについてもっと知らなければ、お互いに手を差し伸べ合えるような平和な世の中にはならない。そう強く思った当時の経験は、今の私の表現に大いに活きています。

初めて心を動かされたアート作品

私、小さい頃から絵が好きだったわけじゃないんです。雑誌の可愛いモデルさんの顔に自分の顔を貼りつけるような面白コラージュにハマったりしていたことはあったけれど、アートの道に進みたいとは考えたこともありませんでした。

アートに初めて心を動かされたのは、ドイツに住んでいた頃。ボンとケルンを結ぶアウトバーンを親の車で走っていたとき、元郵便局だった建物に現代アーティストの作品がゲリラ的に飾ってあるのを見かけたんですが、それが素晴らしくて。ドイツに関わりの深い著名人たちが、カラフルなポートレートになって壁一面に敷き詰められていたんです。その圧倒的な光景にひと目で魅了されて、何度も連れていってもらったのを覚えています。

イラストを描き始めたきっかけ

最初の就職先はホテル。人と話すのが好きだったし、英語も使える仕事だったからです。でもすぐに子どもができて退職し、主婦として4年間過ごしました。その後シングルマザーになり、時間の融通がきくお仕事をしばらくしていたんですが、心のどこかではいつもモヤモヤしていました。やりたいことは後まわしで生活のためだけに働く姿を、息子に見せ続けていいんだろうか。私が父親としての背中も見せなくてどうする…って。きっと何とかなる、一生懸命向き合えば何だってできる。今思うと、そんな良くも悪くもチャレンジャーな性格が要所で自分自身のお尻を叩いていたのかもしれませんね。

そんなとき出会ったのが、このお店(取材場所『belts』)のオーナーの国領さん。当時彼は別のレストランで働いていたんですが、「今度店の看板を描いてみてよ」と素人の私に突然言ってきて(笑)。描くことに興味はあったのでお受けして、幾度もの修正依頼に泣きながら必死で対応したんですけど、それが想像以上におもしろかったんです。国領さんは人脈がとても広く、いろんな分野で活躍されている人を紹介してくれて、それも私の刺激になりましたね。「今やらないでいつやる!」と自分を奮い立たせて、本格的にイラストを描き始めました。人生の中で決して多くはない「今だ!」って瞬間がはっきりと見えた気がします。

AYAKAさんに初めて看板のイラストをオーダーした、『belts』オーナーの国領さん。

『belts』では今もアートワークを手がけたり、イベントを開催したりしている。

アートを通じて伝えたいメッセージ

私は幼い頃から、いじめや戦争などのニュースにとても敏感でした。どうしてそう感じるようになったのかはわかりませんが、人との違いを受け入れ、尊重し、寄り添うことのできる人間でいなさいという両親の教えもあり、「みんな違っていい」「みんな平等」という考えが無意識に芽生えていたのかもしれません。ドイツでの経験を通じて、私のその思いはますます強くなりました。

また、最愛の祖父が認知症になったことも、私の価値観に大きく影響しています。大好きな人なのに、会うたびに違う時代にいる祖父。その時代に私が存在することもあれば、まったく影すらないこともしょっちゅう。だからこそ、その一瞬一瞬でいかに愛を伝えるかを真剣に考えましたし、今伝えたい思いは今伝えなきゃいけないと思うようになりました。息子や友達にも「大好き」「愛してる」とストレートに伝えるようにしています。

一人ひとりが思いやりを持って愛を伝えていくことの積み重ねできっと、寂しい思いをする人が減る。そうすれば世界は平和に近づける。そんなメッセージを世の中に伝えようと思ったときに、今の私にとっていちばん人に伝わる方法が「アート」なんだと思います。まだまだいろんなことに挑戦する道の先で、もしかしたらそれが違う方法になる日が来るかもしれませんけどね。

22歳から始めた子育て

今、息子は小学5年生。22歳で出産して、ママになる準備が何もできていなかった私は、息子と一緒に成長してきたといっても過言ではありません。最初は母親らしくいようとがんばっていましたが、離婚して二人になったとき、自分の気持ちを正直に伝えることにしたんです。今となっては親目線でとっても自分勝手だったかなぁと反省しますが、息子は私の話をいつもまっすぐ受け止めてくれて、とても頼もしく感じました。

私がいつもしつこいくらいに愛を伝えているからか、息子も外からかけてきた電話を切るときなんかは「じゃあね、愛してるよ」と言ってくれます。私が展示会などをするときは、学校の友達やそのママにこっそり「○日までやってるから来て」と言っているようで、彼なりに私の活動を応援してくれているんだと思います。

息子へのアートのギフト

以前、息子とパパを描いたことがあるんですが、その絵を気に入った息子が「おこづかいを貯めて買うから取っておいて」と言ってくれて。きちんとお金を払って買うことに意味があるんだと、彼なりに理解していたんでしょうね。180円で購入してくれたその絵は今も大事に飾ってくれています。

息子のために絵を描くことはあまりありませんが、勉強嫌いの彼に「勉強しろよ」という意味を込めて、アインシュタインをモチーフにした絵を描いたことがありました。まぁ、効果はありませんでしたけどね。今では我が家の守り神のようなものになっています(笑)。

人に生かされ、繋げてもらった人生

これまでの自分を振り返ると、まさに人に生かされてきた人生だったなと実感します。アーティストとしての一歩を踏み出すきっかけをくれた国領さんをはじめ、いろんな人に支えられたおかげで今の私があります。

学生時代の友達ともよく会いますし、この活動を通して大人になってからも多くの友人ができました。いくつになっても新たな出会いがあるということに本当に幸せを感じます。30代になるとみんないろんな舞台でそれぞれに活躍していて、とても刺激になります。自分の好きな人が繋げてくれた人は、みんないい人。嫌な思いをしたことはありません。これまでにいただいたご縁を大切に、今後はイラストはもちろん、映像作品や絵本読み聞かせなどの教育分野にも挑戦してみたいです。

子育て中の実体験をもとに製作した絵本『インギンとアンゴン』。

アートを日常に取り入れる

スウェーデンのインテリアブランド、House of Rym(ハウス・オブ・リュム)。デザイナーがアフリカのデザインにインスピレーションを受け、ラフでレトロな新しい北欧デザインを食器や雑貨で表現。好きな柄を組み合わせられるカップ&ソーサーで、ちょっぴりアーティスティックなテータイムを。

カップ ¥2,300(+tax)/ House of RymBUY
ソーサー ¥2,300(+tax)/ House of RymBUY

AYAKA FUKANO

東京生まれ。思春期の多感な時期にドイツの田舎町で過ごし、そこで初めてアートに触れる。最愛の祖父が認知症になったのをきっかけに、「今ある愛は今伝えなくてはいけない」と、世の中に溢れても困ることのない愛をテーマに2014年より本格的にアーティストとしての活動を始める。 ※作品購入などの問い合わせは、WebサイトまたはInstagramのDMにて。

HP http://ayakafukano.com
Instagram @ayahundred

belts

「NewYorkのNeighborhood」をコンセプトにしたレストランカフェバー。ランチの人気メニューは、NYの定番フード「チキンオーバーライス」。夜はイタリアンをベースにした料理と、クラフトビールやワインが楽しめる。

〒108-0073 東京都港区三田5-6-5
都営三田線 三田駅より徒歩10分
JR 田町駅より徒歩10分
東京メトロ南北線・都営三田線 白金高輪駅より徒歩8分
03-6453-8232
https://www.belts-mita.com