OLD PARK-EAST×SHIPS JET BLUE  塗りつぶされた“ニルヴァーナT”の真意 OLD PARK-EAST×SHIPS JET BLUE  塗りつぶされた“ニルヴァーナT”の真意

OLD PARK-EAST×SHIPS JET BLUE
塗りつぶされた“ニルヴァーナT”の真意

ヴィンテージの洋服を解体し、リメイクを施したコレクションを展開する「OLD PARK(オールドパーク)」。Tシャツやカットソーに特化したその派生ラインである「OLD PARK-EAST(オールドパーク イースト)」が、今季、SHIPS JET BLUEとのエクスクルーシブとして、写真家チャールズ・ピーターソンの作品を使用したロックTを発売した。ニルヴァーナを追跡したドキュメンタリー写真に焦点を当てたこのプロジェクトは、同ブランドが得意とする塗りつぶしの手法で仕上げられている。キーマンの中村氏とSHIPSのディレクター北畠芳治に、この画期的な取り組みの経緯と狙いについて伺った。

「オフィシャルの写真に手を加えるのはかなり新鮮でしたね」(中村)

??今回の企画は、どういった経緯で始まったのでしょうか?

北畠「そもそも中村さんとは古着以外で何か一緒にできないか、ということを前々から話をしていたんです。新品であっても古着やリメイクの魅力を感じられるものができないかと思っていまして。そこから始まった感じですね」

中村「自分は普段、ロックTを塗りつぶしたリメイクをやっているんですが、チャールズ・ピーターソンの写真でそのスタイルをやってみるのはどうだろうか? と北畠さんからご提案いただいたんですよ。そこから実際に詰めていったんです」

??チャールズ・ピーターソンをセレクトしたというのは、何か理由があったのでしょうか?

北畠「彼の写真に対して塗りつぶしの手法を施すことが許可されたというのが大きいですね。それなら既存のロックTにはない面白いことができますから。あと、自分も中村さんも彼の写真やニルヴァーナに影響を受けた世代ということもあります」

中村「オフィシャルで塗りつぶしができるというのは、心が広いなぁと思いましたね(笑)。自分もチャールズ・ピーターソンの写真はこれまで使ったことがなかったので、単純に楽しかったです」

??イメージ的には、やはり古着のリメイク風という感じですか?

中村「そうですね。一旦チャールズ・ピーターソンの写真をTシャツに乗っけて加工をして、その上からさらに塗りつぶしていくという感じです。正確にはペンキで塗りつぶしたようなプリントを上から施しています」

??4種類ありますが、作り方は全て一緒ですか?

中村「そうですね。塗りつぶしのスタイルは大きくは2パターンありますが。メッセージのグラフィックに関しては、ニルヴァーナに合わせて新たにデザインを起こしました。OLD PARK-EASTでは、通常ヴィンテージを使用して同様のことをしているのですが、今回のようにオフィシャルの写真に手を加えるのは初めてだったので、かなり新鮮でしたね」

??塗りつぶしの手法は、そもそもどんなイメージで始められたんですか?

中村「もともとはローリングストーンズの“Paint It','Black”からのインスピレーションでもあるんですよ。そこから始まっているものなので、実際にストーンズのTシャツも数多く手掛けています」

??なるほど。中村さんはロックTなら何年代が好きとか、こだわっているポイントはあるのでしょうか?

中村「年代に関しては特にはないですね。自分が見て単純に格好良いと思うTシャツであれば時代は問いません(笑)。わりと自由に塗り潰しちゃってますね。でも今は本当にロックTは入手するのが難しくなってきていて、ニルヴァーナに代表される90年代のものも、いいデザインやサイズはあんまり出てこないんですよ。自分が始めた3シーズン前ぐらいまでは、いいものが結構入手できたんですが、半年も経てば状況は全然変わりますね」

「今回の醍醐味は、大きめサイズもしっかり揃っているところにあります」(北畠)

??やはりロックTは枯渇しているんですね。そんななかで、今の市場で求められるロックTとはどういうものなのでしょうか?

中村「やはり90年代のものがいいんじゃないですかね(笑)。旬だとは思いますよ」

??そういう意味でも、今回の企画は非常に旬ですね。デザイン面では何か特定のイメージはあったのでしょうか?

北畠「内容、プリントの入れ方とかは全然指定していないので、まるっきり中村さんにお任せしました。今回の醍醐味は、古着やリメイク的な風合いと表情でありながらもサイズがしっかりと揃うところだと思います。ヴィンテージでは手に入りにくい大きめのものも充実していますので、例えば女性でもコーディネイトに取り入れやすいんですね」

??確かに今は女性のロックT愛用者も多いですよね。OLD PARK-EASTとしては、そういうところも意識はしているんですか?

中村「特に女性を意識して作ってる訳ではないですが(笑)。ああ、こういうのもアリなんだ、っていう感じです。男性の場合はロックTを買うならやはり好きなバンドのものだと思うんですが、女性の場合はグラフィックの良し悪しになる気がします。視点もちょっと違うと思うので、そこを意識して作るのは難しいですね」

??ニルヴァーナに影響を受けた世代は、今の30?40代だと思うのですが、今回の企画は、やはりその世代のことは意識されているのでしょうか?

北畠「きっとニルヴァーナ自体を知らないという若い方も多いとは思うんですが、だからといって大人だけに買って欲しいというものでもないですね」

中村「実際に普段のリメイクTにしても若い世代が買いに来てくれますし、もちろん僕ら世代も多いです。題材がニルヴァーナだったとしても面白いと思ってもらえれば、世代を問わず受け入れられるとは思います」

??今はデザインありきな部分も大きいのかもしれませんね。今後もこのエクスクルーシブ企画は続くのでしょうか?

北畠「今後はフォトグラファーが変わるかもしれませんし、チャールズ・ピーターソンで多少継続するかもしれません。そこはまだ未定ですが、OLD PARK-EASTの良さを生かした企画は何かしら継続でやっていきたいと思っています」

中村「グラフィックを乗せられるというのは大きな魅力ですし、やりたい事はたくさんあるので、個人的にはチャールズ・ピーターソンの作品はやっていきたい気持ちはあります。ただ、題材が変わっても何か特別感のあるものが続けられたらいいですね」

??今回のTシャツも10年ぐらい経てば、本当の古着になってさらに希少価値も上がりそうですね?

中村「そしたら、さらにそれを自分でリメイクしてみても面白いですね(笑)」

1990年代にアメリカ・シアトルを中心に勃発したグランジシーンに身を置き、ニルヴァーナやパール・ジャム、サウンドガーデンといった数多くのバンドを撮り続けた写真家チャールズ・ピーターソン。OLD PARK-EASTとSHIPS JET BLUE初のエクスクルーシブTは、彼の写真のなかでもカート・コバーン(ニルヴァーナ)をフィーチャーした全4型。大胆にも写真に塗りつぶしのグラフィックとリリック等から引用したメッセージを加えた希少性の高い特別仕様になっている。M、Lの2サイズ展開。

Tシャツ 各¥10,000(+tax)/OLD PARK-EAST × SHIPS JET BLUE

中村仁紀
Kiminori Nakamura

1976年佐賀県生まれ。原宿の古着店「ヴィンテージキング」等を経て2012年秋冬シーズンより「OLD PARK」をスタートさせる。ヴィンテージをダイナミックに解体し、それを組み合わせたリメイクコレクションを発表し多方面で注目を浴びる。2014年よりカットソーとプリントに特化した別ライン「OLD PARK-EAST」もプロデュース。こちらもロックTに塗りつぶしを施した独特の手法で、新たなリメイクウェアの可能性を追求している。

北畠芳治
Yoshiharu Kitabatake

1977年、東京生まれ。ショップスタッフを経てバイヤーへ転向し、以来メンズやウィメンズのバイイングも経験。その多彩なキャリアにより磨かれた審美眼と豊富な知識により裏付けされたバイイング、さらにはエクスクルーシブの製作に定評がある。今現在は、SHIPS JET BLUEならびにウィメンズレーベル・KhajuのMD・インポートブランドのバイイングを中心に担当。