今改めて知りたい 人気ブランド〈M.V.P.〉の魅力 今改めて知りたい 人気ブランド〈M.V.P.〉の魅力

今改めて知りたい 人気ブランド〈M.V.P.〉の魅力

今改めて知りたい人気ブランド〈M.V.P.〉の魅力

SHIPS JET BLUE

ヴィンテージウエアにインスピレーションを得ながら、それを現代の視点で絶妙にアップデートする。それが人気ブランド〈M.V.P.〉の真髄だ。手がけるのは東京のストリートカルチャーの創成期である90年代を牽引してきたデザイナー、真柄尚武氏。今季SHIPS JET BLUEでも別注アイテムを展開するそのブランドの真価に、今改めて注目が集まっている。もの作りの根底にあるものとは? ファッションの面白さとは? デザイナー本人の言葉からそれを探った!

??今、世界から注目を集めている東京のストリートカルチャー。それが誕生した時代が、90年代だ。ヒップホップを始めさまざまなカルチャーが流れ込み、それを真似事ではなく自分たちのものとして消化し、世界に発信する。今世界で活躍し注目されているデザイナーやブランドは、その頃に活躍した人たちが多いことがそのことを裏付けている。真柄尚武氏もそのひとり。裏原宿の伝説的ショップ『ヴィンテージキング』のバイヤーを経て、1994年に『realmadHECTIC』をスタート。90年代の一大ムーブメントを作り上げた人物のひとりといって間違いない。

真柄「『ヴィンテージキング』には知人に誘われたのがきっかけ。もともとヴィンテージ好きだったこともあり、ショップスタッフ、バイヤーとして参加させてもらいました。当時、古着といえば西海岸が主流で、はじめのうちは僕らもLAなどで買い付けをしていたのですが、NYのスタッフからある日突然荷物が届いて、その中に気になるアイテムがいくつかあったんですね。じゃあということでスタッフを一人行かせたら翌日電話がかかってきて、「ここ、ヤバいです」と(笑)。『ヴィンテージキング』はそこからNY中心の買い付けになったんです」

??当時、古着屋のノリは西海岸的というか50〜60年代前後のカルチャーであるロカビリーだったり、リーバイスの501XX','2nd','1stのGジャンあたりが主流。それに対して、NYの古着のバイヤーの方達のノリはというとカバーオール、ハンティングなどワーク、アウトドア系を取り入れた着こなし方。それが真柄氏のツボにハマった。

真柄「ワーク、アウトドア物の各ブランドの歴史、デザイン等にものすごく影響をうけました。また、両Vや片Vと呼ばれるスウェットが人気が出始めたのもこの頃からで、スウェットはヴィンテージキングの主力商材になりましたね」。

真柄「スウェットと同じくらい人気があったのがスニーカーだったんです。古着中心にピックアップをしてはいたのですが、面白いものであれば現地で展開している現行のアイテムもチョイスしていました。となると同じショップで展開するには無理があるということになり、HECTICがスタートしたんです」

??ヴィンテージキングとHECTICは90年代の原宿を代表するショップ。そのどちらの仕掛けにも真柄氏は携わっていた。そしてそこで真柄氏は自身のブランド、〈マスターピース〉をスタートさせる。

真柄「当初、ショップのオリジナルブランドをスタッフみんなで手がけていたのですが、それぞれ作りたいものに違いが出始めて。その個性を生かすためにレーベルを分けたという感じです。僕はNY的なクラシックなテイストのものがやりたいという希望があったので、それを形にするための〈MASTERPIECE〉をスタート。今思えばシャンブレーシャツなんかをよく作っていましたね。自分の格好も、シャンブレーシャツに501?という感じ。そう思うと今と昔ってほとんど変わらない(笑)。そのときのものが今も古ぼけることなく、新鮮に着られる。やはりそういったアイテムに惹かれるんです」

??現在展開している〈M.V.P.〉の原型は、既にこの当時に出来上がっていたのかもしれない。そしてやっぱりそのルーツはNYにある!?

真柄「そうですね。プリミティブなユーティリティウエア。時代に翻弄されない価値。それが自分の求める物だと思います。もちろんシルエットや匂いみたいなものは時代にアジャストしていくべきだけど、そのシーズンだけで終わるものはあまりつくりたくないですね」。

??ベーシックなアメリカンカジュアルを基本としつつ、“いかにも”じゃない現代的なアレンジがきいている。そのさじ加減が上手いのだ。

真柄「“ありき”じゃないというか。それを着て夜も遊んでほしいっていうのがあります。自由に楽しんでほしいんです。アメリカントラッドな服を着てヒップホップな人もいるし、パンキッシュな服を着てスケーターっていう人もいる。そういったクロスオーバーがファッションのおもしろさでもあるのだと思います。要は自分の中で消化できていればいいと思うんです」。

??もちろん真柄氏の作る服はそういった“テイスト”だけでなく、縫製や生地など細部にもしっかりこだわっている。

真柄「それをことさら主張しようとは思わないけど、やっぱりディテールを追求した服には、それなりの匂いというものが出ると思う。似たような服でも格の違いが出るというか。例えば大量生産なのかハンドメイドなのかって言う違いもありますよね。もちろんどっちにもどっちのよさが絶対あると思うし、それぞれの役割がある。みんながみんなマニアックに突き詰めなくてもいいと思うけど、もしちょっとアンテナが引っかかるものがあったら、それにはどういうバックボーンがあって、どういう風に作られているのかっていうのを知ると、もっとファッションはおもしろくなるんじゃないかと思うんですよね

??〈MASTERPIECE〉、〈M.V.P.〉。真柄氏が手がけてきたブランドには、やはりディテールにこだわるからこそのネーミングがほどこされてきた。その真意は?

真柄「例えば〈M.V.P.〉というのはいろんな意味が当てはまるんですよ。今は“モスト・バリューエーブル(最も価値のある)・プロダクション”と言っていますが、ヒップホップの文脈なら“バリュ―エーブル・ポエット”って言うこともあるし、“プレイヤー”でもいいし“ピープル”でもいい。“バリューエーブル”だと価値だけど“バーナブル”だと“最も価値が無い”って言う意味になったり。そこはいろいろ言葉遊びの意味も込めているんです」。

??普遍的で質の高いものを求めると、作るものはおのずとベーシックによっていく。しかし着こなし方でいくらでも新鮮さは生まれるのだという。

真柄「僕にしても、高校の時から着ているものは結局変わらないんですよね。だけどそれを着こなし方でどう見せるかっていうのが重要なのだと思う。例えば歴史あるブランドにしても、それほど提案しているものって言うのは昔と変わっていない。だけどつまらなくはなっていない。なぜかというと、そのもの自体が時代に摩耗されないものであることと、こなし方の提案に鮮度があるから。自分が洋服を作り続けていく上でも、そういうことを大事にしていきたいです

カバーオールというよりジャケットっぽいデザインにしています。ボタンを開けるとジャケっぽくも着られる、かつて実際にあったものをモチーフにしています。胸の斜めのポケットは昔、特許が撮られていたディテール。懐中時計が落ちないようあしらわれたステッチは“ストップロス”といいます。今は懐中時計なんて使わないけど、それをデザインの遊びと捉えるとおもしろい。軽めの生地でぱっと羽織れるし、もう一枚上にも着られる。レイヤードの楽しみが増えるアイテムです。
カバーオール ¥28','000 (+TAX)/M.V.P.

去年ぐらいからまた注目を集めているタイダイ。〈M.V.P.〉としてどんなものに落とし込んだらおもしろいかなと考えたときに、西さんが手がけるブランド〈CORONA〉の「ジャングルウォーカーショーツ」が思いついたんです。製品染めするのではなく、染めた生地を縫製することでデザイン性も増しています。加えて、今季トレンドのバケットハットとバッグを展開。バックは〈CRANK〉という、本物のメッセンジャーが手作りしているブランドです。Tシャツはビースティボーイスをイメージしてラットフィンクモチーフで。

Tシャツ ¥6','800(+TAX)/M.V.P.
ショートパンツ ¥20','800(+TAX)/M.V.P. × CORONA
バッグ ¥8','800(+TAX)/M.V.P × CRANK
ハット ¥6','800(+TAX)/M.V.P??

別注のアイテムは、SHIPS GENERAL SUPPLY定番のシャツとショーツ、そしてストールとハットを、僕のアイデアで生地を変えたもの。今回はとあるデザインをアレンジしたベアーがモチーフです。本家にはないシティボーイ風の衣装を着せてみました(笑)。アップルのモチーフはグラフィカルさ重視。今季らしい春夏スタイルにマッチする、ポップな、そしてシックさもあるイメージに落とし込んでいます。

シャツ ¥9','500(+TAX)/M.V.P × SHIPS GENERAL SUPPLY
ハット ¥4','500(+TAX)/M.V.P × SHIPS GENERAL SUPPLY
シャツ ¥9','500(+TAX)/M.V.P × SHIPS GENERAL SUPPLY
スカーフ ¥4','500(+TAX)/M.V.P × SHIPS GENERAL SUPPLY??

真柄 尚武

原宿の『ヴィンテージキング』、『realmadHECTIC』の立ち上げに関わり、バイヤーとして活躍。2000年後半には自身のファーストブランドとなる〈MASTERPIECE〉を開始。2011年より〈M.V.P.〉をスタート。ブランド創立と同時期に始めたショップ「A-1 CLOTHING」も人気だ。

A-1 CLOTHING

〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-28-7 1F
TEL:03 6427 7943
営業時間 12:00 ? 20:00
http://shop.a-1clothing.com/