08sircusデザイナー・森下公則氏が思う 「多様化するレディースファッション」 08sircusデザイナー・森下公則氏が思う 「多様化するレディースファッション」

08sircusデザイナー・森下公則氏が思う 「多様化するレディースファッション」

08sircusのデザイナー・森下公則氏が思う「多様化するレディースファッション」のこと

08sircusデザイナー・森下公則氏が思う
「多様化するレディースファッション」

SHIPS WOMEN

2003年に発表した自身のブランド「キミノリ・モリシタ」を皮切りに、パリでも定期的にショーや展示会を開きながら、インターナショナルに活躍してきたデザイナー・森下氏。その森下氏が手掛けるブランド“08sircus”のレディースラインが、今シーズンからSHIPSでの取り扱いをスタート! ということで、今までとは一味違うパーソナルなブランド“08sircus”から、2012年よりスタートしたレディースラインを軸に、自身が思うレディースファッションについて、また新作について、今の気分を語っていただきました。

「メンズブランドではいろいろと経験を積ませてもらい、夢も叶って。そこからレディースラインを立ち上げるのは自然な流れだった」

―20年以上にわたり、メンズブランドを手掛け第一線で活躍されてきた森下さん。2年前にレディースラインを立ち上げたのには、何か理由があったんでしょうか?

森下 実はメンズブランドを手掛けている時から、心のどこかで『いつかはレディースも』という想いがありました。でも具体的な時期などはまったく決めずに、まだまだメンズブランドでやりきってないことがあったのでそちらに専念していたんです。そして2年前くらいからレディースでもメンズっぽいアイテムがフォーカスされたり、コレクションなどでも発表される動きがあり。そのタイミングで、身のまわりのスタッフにも恵まれてきたときだったのでスタートすることにしました

―実際に手掛けられてみて、どうでしたか?

森下 そうですね、メンズ服と違って実際に自分が着るわけではないアイテムを形から入って作るというのは当初、難しいなと思うことだらけで。着心地や見た目の美しさは客観的に見ていくしかないので、うちのスタッフだったり、実際に着てもらった方の意見を聞いて生地の分量感などを勉強していきました。
製法や裏地など、今までメンズブランドでこだわっていたディテールでも、レディースになると考え方が全然違って。やり過ぎてしまうと重く、硬くなってしまったりするので、引き算感覚で省いて行かないといけない部分があり、はじめは『こんなチープな作りでいいんだろうか』と思ったこともありました。でもそうした方が表面感の表情が美しかったりするのを知って、ますます奥が深いなと思いましたね

「テーマは決めずに、今は思いついたことをやるだけ『変だけど合っている』と言うバランス感を信じて」

―森下さんから見て、今のレディースファッションとはどんな印象を持たれますか?

森下 どこから手をつけて、どこでやめればいいのか分からないくらい、とても幅広く大きなものになっている印象があります。昔と違って、価格やトレンドも大衆化してきて、今は消費者の方々が選ぶ時代。そこではデザイナーも本質的な部分が求められると思っています

―そういう環境で08sircusをデザインするときは、思い描く女性像などありますか?

森下 そうですね、個人的に僕は女々しい人が好きじゃなくて(笑)。自分をしっかりと持っていて、強く凛とした人が好きなので、そういう女性像はもともとあります。男性でもそうですが、最終的にその人が持っている美意識やセンスが大事。そこが確立されているから、もう何を着ても素敵って人がいますよね。本質に強い自分を持っている人ってかっこいいと思うので、そんな人が似合う服を作れればいいなと思っています。
軸にそういうイメージは持ちながら、今はシーズンごとにあえて言葉でテーマをつけたりすることは特にしていませんね、それほどのことをやりつくしていないから

―テーラードジャケットなど、メンズライクなアイテムをレディースに落とし込んだりされていますが、それはかっこ良くという意図があるんでしょうか?

森下 いえ、そこまで深い想いはありませんが、テーラードって男が着るとサラリーマンっぽいイメージだと思うんですよね、でも女性が着るとたちまちファッションになる。アイテムとして別のものになる気がして、そこが面白いなと思います。一つのジャンルとして確立すると思うんですよね。あとはメンズ目線で素材選びをしたりして、異素材をミックスしてみたり。ボーダーとサテンとか、ちょっと変だけど絶妙に合っているというサジ加減を目指しています

―では今回のコレクションについて、お話を聞かせてください。

森下 例えば首元に巻いているこのファーは、『エコファー』と呼ばれて、和歌山で作られているフェイクファーになります。軽くて取り扱いも簡単なところが特徴なんですが、メンズにはあまり浸透していない素材なので面白いなと。逆にコートの下に着ているブルーのシャツは、メンズではメジャーとされるポプリンという素材を使っています。コートのメルトンもレディースのメルトンと印象は違うと思います。そうやって絶妙なバランスがつくれればいいですね

―では最後に08sircusのこの先の展望について聞かせてください

森下 自分たちがその都度、こだわっていることをコツコツやって行くこと。華やかなファッション業界にいますけど、僕自身は職人気質なところがあるので。時代と対峙しながら、僕らも変化していく。それに共感してくれる人を国内外問わず増やしていけたらいいなと思いますね

08sircusデザイナー 森下公則

広島出身。アパレルメーカーにてチーフデザイナーとして数々のブランドを手掛ける。2002年より社内ブランドとして【kiminori morishita】をスタート。その後、2007年にパリでランウェイショーを発表する。世界約20か国、70店舗にてコレクションが販売される。
 2009年、1月に同社を退職後、新ブランド“08sircus”のSS10ファーストコレクションを始動。
自身が手掛ける初のレディースコレクションとして“08sircus womens collection”がAW12、パリよりデビュー。