〈OLD PARK〉×〈RECLAIMED WORKS〉 「再生」というデザインの在り方 〈OLD PARK〉×〈RECLAIMED WORKS〉 「再生」というデザインの在り方

〈OLD PARK〉×〈RECLAIMED WORKS〉 「再生」というデザインの在り方

〈OLD PARK〉×〈RECLAIMED WORKS〉
「再生」というデザインの在り方

SHIPS JET BLUE

ヴィンテージウエアを解体し、そこから新しい服を生み出す〈OLD PARK〉。“再生”をテーマに掲げ、アメリカの古材を使って空間を演出する〈RECLAIMED WORKS〉。SHIPS JET BLUEのフェアを通して出会った両者には“古き良きものに新しい命を吹き込む”という共通するデザイン哲学がある。それでしか作れないものの面白さ、素晴らしさ。両者がそこにかける想いとは!? 〈OLD PARK〉のデザイナー中村仁紀氏と、〈RECLAIMED WORKS〉の岩西剛氏、手島英人氏の鼎談形式でインタビュー。


――SHIPS JET BLUEが注目するブランド〈OLD PARK〉は今季で3シーズン目。まずはブランドのコンセプトから教えていただけますでしょうか。

中村 ヴィンテージの古着やデッドストックの生地を使って服を作っています。単純にいえばそういうことです……(笑)。まあ、なんというか、アメカジのデザインって正直違いがあまりないじゃないですか。ジーンズとかチェックシャツとか、作るものはだいたい決まっている。その中でもいいもの、目を引くものを作るブランドって何が違うのかと考えた時に、生地が違うということに辿り着いたんです。つまり生地を既製品で作っているところとオリジナルで作っているところでは、仕上がりのクオリティや個性が全然違う。でも僕のブランドはまだまだ規模が小さいので、オリジナルで生地を作るのは難しかった。悩んだあげく、多くのブランドは結局古着をモチーフにオリジナルの生地を作ったりしていたので「じゃあ僕は古着の生地をそのまま使ってしまえばいいんじゃないか」というところに行き着いたというわけです。

――つまりヴィンテージウエアを仕入れてそれを解体し、服として新しく作り直していると言うことですね。

中村 古着を解体もしますし、デッドストックの生地を仕入れたりもします。

――でもそれだけでなくデザイン的にもかなりオリジナリティが高いですよね。パッチワークを主体にした服はほかにはないインパクトがあります。

中村 古着というのは同じものを大量に仕入れるのが難しいんです。だから必然的にパッチワークになる。実は最初からそうしようと思っていたわけではなく、生地の取り都合の問題で自然とそういうデザインが生まれたんです。

――なるほど。独自のアプローチがあったからこそ辿り着いたデザインだったというわけですね。
一方〈RECLAIMED WORKS〉は今年スタートしたばかりですよね。


岩西 今年の6月にスタートしたばかりです。僕と手島は以前も同じインテリア関係の会社に勤めていたのですが、一緒に独立して〈RECLAIMED WORKS〉立ち上げたんです。

――きっかけはなんだったのですか?

岩西 二人とも古いものが好きで、もともとインテリアマテリアルのバイヤーでもありました。離職を機に改めてインテリアのマテリアルを見つめ直し、僕らが出来る事とやらなければならない事をやろうと。そしてその中心にあったソースは古材だったんです。古くて捨てられそうになっている古材を再生して使う。そういう素材に対する考え方は〈OLD PARK〉ととても似ていると思います。

――もともと捨てる材料だったということは、比較的安く手に入るんですか?

岩西 それがそうじゃないんです。古材を使える状態にするまでには手間がすごくかかるんですよ。釘を抜いたり、切り出して奇麗にしたり、大量の古材をストックするための管理費だったり。お金もすごくかかるので、決して安いものではない。むしろアメリカの古材は高価なものとして知られています。

手島 ちなみに古材を使うということの観念はアメリカと日本では違います。日本ではどちらかというと見た目の良さが受けていますよね。古材の味と言うか。だけど海外のオーナーは違う。古材を使うということは現存の木を切らないということであり、それは二酸化炭素の排出を防ぐとこにつながる。つまり「私は環境問題に加担しています」という社会的なステータスとして、古材を使っているんです。

――それはリサイクルとは違うんでしょうか。日本はどちらかというとリサイクルという考え方は進んでいると思うのですが。

岩西 再生紙やプラスチックなどのリサイクル商品って、溶かしたり再加工したりする過程でまた燃料が必要ですよね。新品を作るのと変わらないエネルギーが必要になってくる場合があります。古材をリユースする場合はエネルギーを使う工程が多く省かれています。より環境的なんです。みんなそれに気づき始めていて、見直されているんですね。ちなみにアメリカでは“リサイクル”という言葉はあまり使いません。木材や水などの再生資源に対しては、僕らのブランド名にもなっている“リクレイム”を使うのが一般的です。リクレイムドウッズ、リクレイムドウォーター、リクレイムドランバー。“エコ”も使わない。“グリーン”と表現します。

手島 もちろん古材はデザインとして趣きがあるというのもあります。古材で作ったものはなんとも言えない味がある。その点はヴィンテージのジーパンも同じですよね。

中村 同じですね。むしろ僕の場合はリクレイムというよりは、単純にデザインの一部としてヴィンテージを使っています。色や質感に現行ものには無い雰囲気がある。まあ、今は加工でヴィンテージ感を再現できるんですけどね。クオリティもかなり上がってきています。でも僕はどうしても“加工”っていうのが好きじゃなくて……。加工するんだったら本物を使いたいって言うのがあるんです。その方が絶対に格好いいと思うから。

手島 木材にもヴィンテージ加工はあるんですよ。きっと本当の古材と比べても多くの人は区別できないと思います。でも、一度分かるようになってしまうともうダメなんですよね。本物には到底かなわないんです。

岩西 重みがぜんぜん違うというか……。長年の経験で僕らはそれが分かってしまう。数時間で作った表面的なヴィンテージ加工には拒否反応を起こしてしまうんです。

中村 同感です。

手島 実は僕は昔、古着にも携わっていたんです。先日あまりにもクオリティが高いからヴィンテージジーンズのレプリカを買ったんですが、やっぱりダメでした。一度履いておしまい(笑)。そういうのはもう感覚的なものですよね。

――作り物のヴィンテージに対するアンチテーゼというか、そういった使命感みたいなものもそこにはやはりあるのでしょうか?

中村 そういうのもあるのかもしれませんが、僕は純粋にこっちの方がおもしろいからやっているという感じです。新しい生地を加工した方が安いし楽。でも自分がおもしろくないのでは続けられないですから。

――ただヴィンテージの資源には限界がありますよね?

岩西 あります。おそらく数年先には無くなるでしょう。西海岸はまだいいんですが、東海岸はかなり材料が無くなってきていて、値段が高騰しています。もちろんアメリカは広いのでまだまだ古材が取れる建物はありますが、同じスペックの材料が揃うかというと難しくなってくると思う。需要のあるものからなくなりますし。今、古材の人気はかなり高いですから。

中村 当然古着も限りはあります。いつか無くなるでしょうね。

岩西 ちなみに今使っている素材が100年経てばヴィンテージになるというわけではないんです。なぜかというと、無垢なものではないから。昔は家作りに無垢の木材を使っていて、それが経年変化で味が出る。でも今は効率が優先されて、だいたいが安価な合板なんですね。それではいくら時間が経ってもヴィンテージにはならない。それはジーンズも同じだと思います。いい素材を使えば必然的にコストもかかりますが、資産価値が減らないという意味ではエコですよね。

――古き良きものに目を向けるという事は、いろんな面でメリットもあるんですね。

岩西 最近はそういうものに興味を示す人が減っていますよね。好きな人と興味がない人が二分化しているという印象です。分からない人にとっては全然意味が分からない話でしょうし……古いものが好きな人ってちょっと変わってますもんね(笑)。

手島 もちろんその価値観を押し付けるつもりはなく、分かる人、好きな人に伝わればいいのかなと思っています。

岩西 ただ“時間”っていうのは超えることのできない絶対的な価値なんです。そこは是非皆さんにも感じてほしいところではあります。重ねて来た時間を追い越すことは絶対にできませんから。

――でも確実に評価は高まっているんじゃないでしょうか。〈リクレイムドワークス〉は今年からですが、〈オールドパーク〉は実際にこうやってフォーカスされているわけですから。

中村 あまりにも面倒くさくてみんなやらないから珍しがられているって言うのもあるんじゃないですかね(笑)。もの凄く大変ですからね、これ作るの。ヴィンテージを探して、解体して、パッチワークして。

岩西 でも面倒くさいことをやるということが大事だと思うんです。今は手間がかかることはやりたがらない時代ですから。だからこそそこに価値があるのだと思います。

カルフォルニア州サンタバーバラにあるローカルファニチャーメーカーBrothers of Industryが手がけた、古材を利用したスケートボード。

8/23?9/1までSHIPS原宿店で開催された〈OLD PARK〉のフェアの模様。使用されている什器はすべて〈RECLAIMED WORKS〉が手がけたもの。「古いものには古いものが似合う」。その言葉通り、両者の魅力が引き立て合っている。

右:以前OLD PARKで展開していた人気のカーディガンをSHIPS JET BLUのエクスクルーシブで復刻。ヴィンテージの生地を使ったパッチワークデザインですべてが一点もの。?37','800、中:SHIPSのアイコンカラーであるブルーをテーマにカットソーの制作を依頼。7分丈で身幅が広いのが特徴。?21','000、左:同じくブルーをテーマにした別注品。コーデュロイパンツのウエスト周りをパイル地に切り替えた斬新なデザイン。パンツ?29','400/すべてOLDPARK

OLD PARK

デザイナー中村仁紀が手がける新進気鋭ブランド。ヴィンテージショップ『VINTAGE KING』のスタッフやブランドのデザイナーを経て独立。2012年秋冬シーズンから〈OLD PARK〉をスタート。ヴィンテージの服を解体し、パッチワークで作られる独創性の高いコレクションに注目が集まっている。

RECLAIMED WORKS

2013年6月にスタートした、岩西剛、手島英人による、“再生”をテーマに活動するデザインユニット。南カリフォルニアから古材を仕入れ、家具や什器に再利用。内装やリフォームまで手がける。