老舗高級生地メーカー、Loro Piana本社を訪問 老舗高級生地メーカー、Loro Piana本社を訪問

老舗高級生地メーカー、Loro Piana本社を訪問

老舗高級生地メーカー、Loro Piana本社を訪問

SHIPS MEN

 スーツの世界に少しでも興味をもったら、真っ先に聞こえてくるのがLoro Piana(ロロ・ピアーナ)という言葉だ。Loro Pianaは、1924年創業というイタリアの老舗高級生地メーカー。生地にはどれも独特の光沢感があり、上品でエレガントな雰囲気が漂っている。そんな、世界の紳士をとりこにしてきた生地はどんな場所でつくられているのか? 今回は特別に現地レポートをおこなった。


 Loro Pianaの本社は、ミラノの空港からクルマで1時間ほどのピエモンテ州クアローナにある。ここには本社と毛織工場があり、近くのロッカピエトロにカシミヤの紡績工場と研究所、ビエッラに仕上げ工場、ゲンメにウーステッド生地(梳毛)を中心とした紡績工場と4つが点在している。

 クアローナは山間の美しい街で、水も空気も美しい日本の東北のような場所。また、ミラノからほど近いということで、高級住宅地にもなっている。Loro Pianaのエントランスには、創業当時に使われていた紡績機械などが展示されており、同社の歴史を知ることができる。そこからいざ工場へ。

老舗生地メーカーと聞くと、古い機械が並んでいるイメージがあるが、この工場の設備は最新鋭で、作業のほとんどはオートメーション化されている。天井には可動式の集塵機か吊るされており、工場内は塵ひとつないほどキレイにされていた。また、川から汲み上げて使用した水を、ろ過して再び川に戻すなど環境への配慮も十分。「美しい工場からしか、美しい製品は生まれない」と私たちを案内してくれたスタッフが語っていたのは印象的だ。

ウーステッド(梳毛)生地を織る機械。工程の多くはオートメーション化されていた。

工場で使われた水がここでろ過され、きれいな水にした後は川に戻される。

Loro Pianaは、糸から自社でつくり、生地まで完成させる世界でも数少ない一貫生産をおこなうメーカーとして知られている。また、デザイナーからマーケティング、営業までもが同じ敷地内にいるので、さまざまな点できめ細やかな対応ができるのも特徴だ。ミラノから近いということで、街全体が洗練されているのも同社の強みといえるだろう。今回、SHIPSでは別注生地の打ち合わせもおこなったが、デザイナーだけでなく色の調合師まで在籍しているので、細かい部分までスムーズに打ち合わせすることができた。また、同社には創業遺体の膨大なアーカイブがあり、そのデザインを自由に参考にできるのは羨ましい限り。スーツ好きにはたまらない宝の山といえる。

コンピューターにカラーレシピを入力すると、自動で調合して色出しをおこなう。

長い歴史を誇るLoro Pianaの生地見本が資料室にすべてアーカイブされている。

 生産の多くは機械化されているが、仕上げなど要所のチェックはすべて人間が細かく管理している。その機械化と手作業のバランス感覚には脱帽するほど。生地が出来上がるまでに約60か所のチェックポイントがあるとか。一般的に、イタリア人は仕事をラフにこなしそうなイメージがあるが、この工場では各工程において職人がプライドを持って丁寧な仕事をおこなっていた。それこそが、エレガントな生地を生み出す秘密というわけだ。一連の作業を知ることで、高価だと感じていた生地が、妥当もしくはお得な価格なのでは? と思ってしまうほど。この機会に、みなさんもLoro Pianaの魅力を再発見して頂ければと思います。

カシミヤをほどよくランダムに起毛させるため、現在も使われているあざみの実。

最終チェックは人の手で細かく検品され、合格したものだけが世界に送られる。