アイネックス 商品戦略部長並木孝之さん
深い専門知識とファッションへの造詣で知られるネックウェアディレクター。業界にこの人ありといわれる敏腕。
シップス バイヤー今村恭平
ドレスクロージング全般を担当。コロナ禍以前は年2回のペースで渡伊し、世界の一流ブランドと太いパイプを築く。
―働き方の多様化が進む今、ビジネスウェアのカジュアル化が急速に進んでいるといわれます。
そのなかで新たなネクタイブランドを始動させた理由はどこにあったのでしょうか?
今村:確かにネクタイを必要とする場面は減ってきています。しかし、ウィメンズと比べて色・柄・デザインの選択肢が限られるメンズウェアにおいて、ネクタイは最も多彩な表現ができるアイテム。いわば時代性の象徴なんです。ゆえに、ネクタイなしに男のファッションは語れない。まずそれが前提としてあります。
並木:世間的にはネクタイ不振といわれますが、それはあくまで全体の話。しっかり提案力のあるものは今も大変好調なんです。ネクタイには“身に着けるだけで信頼感が上がる”という強い力があります。ビジネスでこれほど頼れる武器はない。“仕事で勝つなら、セールストークよりタイドアップ”と主張したいですね(笑)
今村:おっしゃるとおり。そこで今こそ、“最もシップスらしいネクタイを、最高のクオリティで表現したい”と思い至りました。もちろん引き続きインポートの買い付けにも注力していますが、それらは各ブランドの提案をシップス流に解釈したコレクション。対してプッチーニは、シップスが考える“最旬”を混じり気なしに表現するものです。そのためには、我々のイメージをベストな形で具現化してくれるパートナーが不可欠。思案の末に辿り着いたのが、イタリア最古にして最高峰の生地ブランド「フェルモ フォッサーティ」でした。
―そこで並木さんの出番というわけですね。
並木:はい。弊社はネクタイメーカーですので、フォッサーティとは強いコネクションがあります。同社の特長といえば、150年の歴史を通して生まれた膨大なアーカイブ、希少な旧式織機、そしてモードからクラシックまであらゆるブランドの要望に応える表現力。7年ほど前にジョルジオ・チトロという人物が参画して、より提案力に磨きがかかりました。
今村:イタリアの一流ネクタイブランドで、フォッサーティの生地を使っていないところはないというくらい有名ですよね。ピッティなどの展示会では、「ウチはフォッサーティの生地を使っているんだ」と自慢するブランドもあるくらいです。
並木:もちろん生地のクオリティも抜きん出ています。最高の糸を贅沢に使い、ぎっしりと打ち込んで織るので、触ったときの上質感が全然違うんですよね。今回プッチーニで使った綾織り生地も、他では決して真似できない品質です。
―デビューコレクションはドット、スクエア柄、千鳥格子の3柄で構成されていますね。
今村:すべてアーカイブをモチーフとした柄ですが、“柔和さ”を意識して色柄表現をアップデートしました。今はタイドアップでもカタ苦しすぎないほうがいい。そこで、森の緑、土のベージュ、ワインの赤といった、自然風景をインスパイアした色展開にしています。
並木:あえてシルクのツヤを抑えて、マットな風合いにしているのも特徴的ですね。これによって、程よく力の抜けた印象に見えるんです。
今村:他では見られないような独特のデザインですが、ネイビーやグレーなど、ベーシックなスーツ・ジャケットに合うよう意識しています。スーツとネクタイを同系色にしても平板に見えないし、赤や黄色を合わせても意外なほどすんなり馴染みますよ。
並木:シックでいて、ちょっと気の利いたスタイリングを築けるのがポイントですね。
―では少し視点を変えて、ネクタイの仕立てについてもお聞かせください。
今村:縫製に関しては、日本の職人によるハンドメイドにこだわりました。味のあるイタリア縫製もいいのですが、仕事の丁寧さや耐久性にかけてはメイド・イン・ジャパンが一番ですからね。
並木:ネクタイは生地ばかりにフォーカスされがちですが、いくらいい生地を使っても、仕立てがそれに伴わなければ台無し。そこで、弊社が擁する職人技を結集して、ベストクオリティに仕立てました。生地の魅力を引き立てるために、芯地ひとつまで厳選しています。ちなみに、プッチーニのタイは裏地まで表地に使えるほどのシルクを使っています。このシルクは、表地としても使えるクオリティのものです。最近はコストダウンで化繊の裏地を使うところも多いのですが、やはり見えないところまで上質にこだわりたいですからね。
今村:並木さんとフォッサーティ社に全面協力をいただけたおかげで、大いに自信をもってご提案できるデビューコレクションが完成しました。ちなみに「プッチーニ」というブランド名は、フォッサーティのオーナーであるオット・マンテッロさんの考案によるものです。オペラの巨匠にあやかった名前ですが、代表作のひとつに日本を舞台とした「蝶々夫人」がありますよね。同作のように、イタリアと日本の魅力を融合させた傑作を生み出したいという思いを込めたブランド名です。是非ともご注目ください!
今季のプッチーニは3種類の柄で展開。あえて大きさを不均一にして遊び心を加えたドット、ランダムな動きをつけたスクエア柄、発色を抑えて優しい印象に仕上げた千鳥格子と、クラシックにひとひねり加えることで柔和さを表現しています。キリッとドレスアップしつつ、今のムードにふさわしいリラックス感も演出できるコレクションです。
Tie[Puccini for SHIPS]¥12,980~ (inc. tax)
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